前潟都窪の日記

2004年12月04日(土) ベチャ��

 ▼ベチャにまつわる思い出
 勇は春の陽射しを浴びながら、濡れ縁に腰を下ろして、天理教の集会場を建設中の工事現場から拾ってきた40センチ角ほどの板切れの上に、粘土を置いて一心不乱にベチャの面型を作っている。竹のへらで目、鼻、口、牙眉を彫り込んでいく。傍らに置いた粘土を千切って団子にし、くっつけてみたり、外してみたりしては、出来るだけ恐ろしい形相のベチャに作らなければならないのだ。

 この地方では、小学校4〜5年位の年頃になると、男の子達はベチャの面作りに取りかかるのである。秋祭りがくるまで、自分がどのような面を作っているかは、親友にも内緒にしておくのが、子供の世界のしきたりとなっていた。兄のいる者は兄から兄のいない者は父からその作り方を教わり、友人から教わることは決してしなかった。

 粘土で満足のいく形相の面型が出来上がると、これを適当な水分が残るまで、陰干ししてから、石鹸水を面型に塗りつける。次に新聞紙を細かく切って、水に浸し粘土の面型の上に貼り付けていく。新聞紙を二重、三重に貼りつけたところで作業は中断しなければならない。一日置いて、今度は書き潰した習字の半紙を持ってきて、メリケン粉で作った糊を面型に塗りつけ、その上へ半紙を貼り付けていく。半紙を四重、五重に貼り終わったところで糊が乾くのを待って芯になっている粘土を取り除く。

 勇がベチャの面を独りで作ってみようと思いついたのは、勇のクラスへ昨年の暮れに東京から転校してきた香織に,手作りの面を見せて褒めて貰いたいという気持ちが働いたからである。


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