前潟都窪の日記

2004年10月16日(土) 初めての帰郷��

 ▼初めての帰郷
 日本鉱業の鎮南浦精錬所の技術者として朝鮮に世帯を持った父が、長男の勇を連れて初めて帰郷したのが、勇の最初の旅であった。

 この時期には父方の祖父作次郎も健在で県南の豊州村字高須賀の農家で隠居生活を送っていた。魚釣りが好きで自宅周辺の川で太公望を決め込み余生を楽しみながら過ごしていた。そこへ次男の作次が孫を連れて外地から帰郷したので余程嬉しかったのであろう、滞在中ずっと勇の子守役を買ってでた。勇の脳裏には作次郎爺さんとのこの時の交流が鮮明に焼き付いている。そして、旅という言葉や祖父という言葉を耳にしたとき、必ず思い出す情景が幾つかある。 その一は、祖父、作次郎の背中に掴まって、川向かいの畑へ砂糖黍を取りに行ったことである。幅5m程の川には人一人が通れる程の板が、一枚渡してあって、その上を板の振動に合わせて体をゆさぶりながら器用に渡って行くのである。
 
 川へ落ちるのではないかという恐怖が、幼い心の中に沈澱して忘れられない心象風景となったのか、或いは、幅狭い板の上を器用に渡って行く祖父のバランス感覚と運動神経が、その幅広い背中と共に頼もしさを印象付けたのであろうか。このことだけはいまだに鮮明に記憶の底に残っているのである。


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