嗚呼!米国駐在員。
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2004年06月11日(金) 中国の建設ブーム

08年に北京五輪を控える中国で、ホテルの建設ラッシュが始まっている。大手ホテルチェーンの世界戦略の中でも、中国への関心は飛び抜けて強いようだ。

中国への旅行者は年々急増しているようだ。外国企業からの出張が増えたことや、アジアにも格安航空会社が登場し始めたことなどが要因とみられ、今後数年間はこの傾向が続く見通しという。五輪開催地となる北京や上海のほか、アモイ、成都などの地方都市でも、数え切れないほどのホテル建設工事が進められている。

5月に中国出張に行ったときも、あらゆる場所にクレーンが乱立していて、その活況振りには驚いた。人海戦術を使っており、うじゃうじゃと作業員が現場にいる。
聞いた話では、人はありあまるほどいるから、彼らの給料は上がることはない。よって、人件費が上がることはなく、将来的にもしばらくは中国の競争力は保たれるようだ。賃上げを要求する作業員は「それならヨソへ言ってください。他を雇いますから。」と言われるという。これが中国の現実とはいえ、我々の感覚では、何とも労働者に対して厳しい環境だと感じる。

中国当局による外資系企業への規制が最近になって一部緩和されたこともあり、特に米系大手チェーンなどの積極姿勢が目立つ。ハイアットは「中国は劇的な発展を遂げようとしている。われわれは今後20年間にわたり、その発展にかかわっていく方針だ」とテレビのニュースで語った。
世界各国にホリデイ・インを展開するインターコンチネンタル・グループは、中国国内に41カ所あるホテルを今後数年間で倍増させる計画という。また、香港を本拠にアジア一帯でホテルを展開するシャングリ・ラ・ホテルズ・アンド・リゾーツは、すでに総客室数8000室の4割を中国に置く。今後さらに8カ所に建設を予定しているという。
こうした動きに既存のホテルも危機感を募らせて、多くが先を競って増改築に乗り出している。

実際にいくつかのホテルを泊まって感じたが、こうしたハード面だけを競っており、ソフト面、従業員教育ではまだまだだと思った。一流といわれるホテルでも、英語が話せない人間が受付にいることは珍しくなかった。こうした事態は、求職者は掃いて捨てるほどいる、といった先ほどの経営者側の考え方も影響していると思う。

少しでも今より良い条件の求人が見つかればすぐに転職する若者が多い、と聞いたが、企業から見ればこれでは長期的視野にたった人材教育もままならないと思う。

2008年の五輪までに、旅行者受け入れの人数で世界一に上り詰めるとの予測もある。北京オリンピックは、中国国家の威信をかけても、何が何でも完璧な体制を整えるだろう。

ただ、問題は五輪の後だ。前回五輪の開催地となったシドニーは、ホテル市場が供給過剰となった後遺症に今も悩まされている。 中国のホテル・ブームには五輪以外の要因もあるのだろうけど、北京がシドニーと同じ道をたどる恐れは十分にある。

世界が注目する国家だけに、くしゃみをした場合に与える影響はなみなみならぬものがあるに違いない。


Kyosuke