加藤のメモ的日記
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2019年05月22日(水) ゲノム編集を利用した遺伝子改変

能力や容姿操作に懸念 ゲノム編集の子の倫理・安全性に問題あり

中国・南方科技大の賀建季副教授が、人間の受精卵のゲノム編集を行って双子の女児を誕生させたことを広東省政府の調査チームが認めた。ゲノム編集は狙った遺伝子を改変することだできる技術だが、安全性が確立されておらず、親が望む容姿や能力を持つ「デザイナーベビー」を作り出すことに応用されかねないとして懸念されている。

教授はエイズウイルス(HIV)に感染しにくくするために受精卵のゲノム編集を行い双子の女児を誕生させた。教授によると、研究に参加したカップルの精子と卵子を体外受精させ遺伝子を改変した受精卵を女性の子宮に戻して妊娠、出産させたという。だが、想定外の健康被害が起こる可能性がある。北海道大学の石井哲也教授(生命倫理)は「安全性が確認されていない実験的な方法を行ったことは、生まれた子の人権にかかわる問題だ」と批判する。狙いとは別の遺伝子に問題がないかを調べる方法も確立されていない。健康上の問題がない子供を出産できるほど、信頼できる技術ではない。

米科学アカデミーなどは2017年、安全性を確保したとしても、能力や容姿を操作する目的での遺伝子改変は認めない報告書を公表した。貧富の差が社会的な格差を一層広げかねないなどとしている。

人為的に改変れた遺伝子は子や孫にも受け継がれる。ゲノム編集された動物や植物は、安全性や自然界への悪影響がないかを確認されるまで隔離され、管理された空間の中で育てられている。石井教授は「子供の健康影響を長期的にフォローすることが大切だが、実際的には難しい。ゲノム編集された女児が子度を産むことを禁じることも人権侵害にあたる」と話す。また、人間の受精卵のゲノム編集について石井教授は「顕微鏡で見ながら卵子に精子を注入する)顕微授精をする赴任クリニックなら、技術的に受精卵のゲノム編集が可能だ」と今回中国で起きたような事例が安易に広がる可能性がある。

世界的にに対外受精などをする医療施設が600を超える日本は、世界的にみて不妊治療が盛んだ。だが、受精卵の遺伝子を改変し、妊娠させることを禁止する法律はない。国は指針で禁止するものの。対象は研究のみで医療行為は対象外だ。フランスやドイツは遺伝子を改変した受精卵や精子、卵子で妊娠や出産することを法律で禁止している。ドイツは罰金や懲役刑も設けている。


『朝日新聞』1.22


加藤  |MAIL