加藤のメモ的日記
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| 2016年03月04日(金) |
戦死者超す自殺者 1日20人以上 |
2001年の9.11テロから14年以上続く米国の「対テロ戦争」。6.800人以上の米兵が死亡したほか、退役軍人の心的外傷ストレス障害(PTSD)や自殺者が社会的な大問題になっている。
退役軍人のケアが国家予算を圧迫している
ボストン中心部から南へバスで30分。終点の目の前に13階建ての巨大なビルがある。退役軍人省(VA)の病院である。入り口には「武器持ち込み禁止」の警告が。人口66万人の同市には、他に大規模なVA病院が2か所、診療所が9か所ある。
世界一の経済大国なのに、国民皆保険制度のない唯一の先進国、米国。兵士は戦争での犠牲と引き換えに一定の保証がある。退役後も国の医療サービスを受けることができる。現役兵には同国防総省病院がある。国家予算の1位は軍事費で6000億ドル、70兆円だが、2位が退役軍人省予算で1700億ドル、20兆円にのぼる。第二次大戦以降の米国の退役軍人は2100万人以上で、その4割がVAに登録されている。
「戦争の影響は肉体と精神の双方に及びます。ベトナム戦争では枯葉剤が大きな問題になっています。因果関係の照明に長い時間がかかり、全体像はまだ不明です。枯葉剤の影響でベトナム帰還兵には糖尿病、腎臓病、前立腺ガンなどの症状が多く出ています」(ボストンのVA内科医)
「最近の戦争ではメンタルヘルスが大きな問題になっており、復員兵の自殺も増えている。退役後も就職できずホームレスになる人も多いだから初心患者全員にPOSDの問診をします。10年前にはしませんでした」PTSDが1980年に初めて精神障害として米国精神医学会が認定した。ベトナム戦争での残虐行為などで心的外傷を負った多くの帰還兵が精神的不調を訴えた結果である。
2001年以降の対テロ戦争でPTSD患者は急増し、2014年までで17万人以上に。VA病院を利用したアフガニスタン・イラク戦争帰還兵のPTSD罹患率は29%というデータもある。問題はPTSDにとどまりまらない。ホームレスの7人に1人強が退役軍人である。2013年は14万人。黒人男性のうち、退役兵がホームレスになる割合は全体平均より1.4倍多いとの調査結果もある。退役軍人が2012年に出した「自殺データ報告」では、退役軍人の自殺者は1日推定22万人(2010年)。対テロ戦争前から急増している。この数字はVA登録者に限られ、実数は1日35人だとの試算もある。
ゴシュロイ医師がさらに懸念するのは外傷性脳損傷の多発である。「最近の戦争では路肩爆弾(IED)で軍用車両から転落し、脳に損傷を受ける例が多発している。TBIを扱う湾岸戦争特別診療所も作られている。TBI患者は2007年以降、毎年2万人以上増加している。2000年からの総数で34万人に達する。ゴシュロイ医師は「戦争が恒常化するもと、国もVAのような包括的な保障体制をつくらざるを得なかった。『戦争する国』になれば、このような隠れた負担が不可避的に増える。戦争しなければ、今のVA病院を一般国民が使え、英国の国営医療制度(NHS)のようなものにできるのに…」と語る。
『週刊朝日』2.28
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