加藤のメモ的日記
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| 2016年02月19日(金) |
ロシアスパイ暗殺真相解明で狭まる「プーチン包囲網」 |
英国内務省の独立調査委員会は、21日、2006年にロンドンで起きたロシアの元スパイで反体制派リトビネンコ氏暗殺事件で「ロシア連邦保安局の指示を受けたロシア人二人が放射性物質ポロニウムで実行した」とする調査結果を発表した。[「プーチン大統領おそらく承認した」と断じた。事件発生後10年ぶりの「真相解明」だが、英国政府は長年、対ロ関係に配慮し、夫人の調査要請を却下してきた。
しかし、ウクライナ危機後の英露関係悪化を受けて昨年2015年1月に公開調査を開始、今回328ページの報告書を公表した。これを受けて、キャメロン英首相は「ロシアに冷たく対応する」と強調。米大統領報道官も「米国が何らかの措置をとることもあり得る」と追加制裁を示唆した。欧州諸国も一斉にロシア批判を強めている。
ロシア外務省は「刑事事件の政治化は遺憾」と反発したが、この時期の調査結果公表は痛手だ。おりしも原油価格が一時、1バレル=26ドル台と12年ぶりの安値を付け、ルーブルは史上最安値を更新。企業の倒産も続発し、「原油安が続けば、年末にもデフォルトの恐れ」(ロシア財務省幹部)と憂慮され始めた。 そうした状況もあり、ロシアは1月以降、ウクライナに特使を派遣したり、米国と外交協議を行うなどウクライナ問題で和解姿勢に転換。シリアのアサド政権と反政府勢力の接触をアレンジし、制裁緩和に向けて西側の関心をあ買おうとした矢先に報告書が出た。
「ロシアの経済危機に注目すべきだ」と強調するオバマ大統領はロシアの弱点である経済を締め上げる構え。5月の伊勢志摩サミットで、7月に期限切れとなる欧米の経済制裁延長を主導するはずだ。一方で、プーチン大統領が安倍晋三首相に今春ロシアでの非公式首脳会談を開くよう求めてきたのは、G7の議長を務める安倍首相の調整力に期待しているからである。
「今回のサミットでは、シリア問題、ウクライナ問題、イスラム国(IS)対策などロシアが影の主役となるテーマが多い」(日米外交筋)安倍首相にとって、展望のない北方領土問題でプーチン大統領に恩を売るチャンスではあるが、対ロ強硬を貫く英米の手前、距離感のとり方は難しくなる。
『週刊文春』2.4
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