加藤のメモ的日記
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2014年12月25日(木) 不意打ち解散 戦略成功

自民党が大勝した第一の要因は、選挙の争点を経済一本し絞って訴え続けたことだ。野党側は「円安で物価が上がり、暮らしは苦しくなっている」(民主党 海江田代表)などと批判した。自民党内にも当初、地方選出議員を中心に「地方には景気回復の実感がない。何を訴えるのか」との声もあった。しかし首相は、株価上昇や有効求人倍率といった経済指標の改善などをアベノミクスの成果と位置付けて前面に出した。「雇用を100万人以上つくった」「賃金は2%、ボーナスは7%増えた」など、ひたすら具体的な数字を強調した。

特に地方での演説では「この道しかない。日本の隅々に景気回復の温かい風を送り届ける」と訴えた。自民党幹部が「『景気回復』には誰も反対できない」と語るように、そもそも世論を二分する論点になりにくく、谷垣幹事長は12月14日よる、「有権者はアベノミクスが成功して欲しいとの願いがあった」と分析した。

首相は集団的自衛権の問題で具体的な説明に踏み込まず、原発再稼働にもほとんど触れないなど、世論の賛否が分かれる政策をあまり取り上げなかったことも奏を功した。だた逆に、選挙戦を通じて安倍政権の政策がどこまで有権者の信任を得たのかは見えにくくなったといえる。第二の勝因は、野党側の選挙準備が整わないうちに解散をしかけたことだ。野党内では、衆院解散は「来年の夏以降」(民主党幹部)との楽観的見方が支配的だった。この結果、候補者擁立が遅れ、維新の党などとの選挙協力も進んでいなかった。

一方で首相は、来年に入れば原発再稼働や、集団的自衛権の行使容認に伴う関連法案の審議が始まることで、政権の体力は奪われるとみた。政治とカネを巡って野党がさらに攻勢を強めるとの懸念もあった。首相は新聞各紙の世論調査の中で政党支持率に着目。自民と民主の支持率の差は二年前の衆院選では数ポイントだったが、今回は20ポイント以上離れた調査結果もあり、「比例区で大幅に伸ばせる。第三局の票も民主でなく自民に戻る」として、解散に打って出た。

加えて、二大政党から政権を担う政党を選ぶ小選挙区制の定着が、自民党を大勝に導いたとの見方もある。大勝が予想される与党を牽制するために野党にと投票しようとする動きが弱まり、「その時点で、どちらが政権を担うにふさわしいかを基準に投票先を決めるようになった」(自民党幹部)報道機関の情勢調査で与党優勢が伝えられても、野党への寄り戻しがそれほどでもなかったのは、こうした有権者意識の変化も背景にあるとみられる。


『朝日新聞』12.15


加藤  |MAIL