加藤のメモ的日記
DiaryINDEX|past|will
| 2013年12月31日(火) |
秘密保護法は隠蔽加速 |
自衛隊訓練で兄が死亡 遺族は究明求めたが…名前黒塗り真相はヤミ
兄の名前すら伏せられていた。訓練中に亡くなった自衛隊員の弟が、その原因に迫ろうと情報公開請求した資料はほとんど黒塗りだった。その理由は「わが国の安全を害するから」というもの。秘密保護法が成立したら、ますます隠蔽がひどくなる―と遺族は訴える。
秘密保護法は隠蔽加速
亡くなったのは、札幌市の陸上自衛隊真駒内(まこなまい)駐屯地の島袋英吉さん当時20歳。2006年11月、訓練中に倒れ、亡くなった。双子の弟で当時、自衛隊員だった恵祐さん(27)の家族は「事故死」とする防衛省の見解に納得できず翌年、「公務災害発生報告書」開示を求めました。しかし、開示された資料は傷病名、医師の診察所見はおろか、島袋さんの名前すら真っ黒だった。「真相を隠すために、一切の事実を隠そうとする。そこまで冷酷になれるのか」家族の国への不信感は、事故当初からのものだった。
脳挫傷8ヵ所 全身に内出血
2006年当時、千葉県陸自松戸駐屯地にいた恵祐さん。一報を受け、沖縄の父母より一足早く北海道に駆けつけた。ベッドに横たわる英吉さんは変わり果てていた。前歯は折れ、唇は裂け、顔は二重三重に腫れ上がっていた。8カ所もの脳挫傷による出血、肋骨骨折、全身に及ぶ内出血…。
医師は「頭を開けると脳が飛び出してくる。手術はできない」と告げた。恵祐さんは「これは本当に訓練による事故なのか。暴行ではないか」と強く疑った。すぐ後に駆けつけた父・勉さん(53)も、英吉さんが所属していた輸送部隊長に詰め寄った。その時隊長は、「徒手格闘訓練」での事故と説明した。素手で敵を捕獲又は殺傷する訓練である。
輸送隊長は「テロ対策のために、数年前から取り入れた訓練。英吉君は優秀で、徒手格闘訓練の体内大会の選手に選ばれた」と言った。徒手格闘訓練は、単独で基本的動作を習得させた上で、対人動作による組み手、勝敗を競わせる試合へと進めていく。しかし、英吉さんは基本動作しか習得できておらず、受け身も不十分なのに体内大会の要請要員に選ばれたのだった。
「英吉は子供の頃から走るのも苦手。中学時代は吹奏楽部で音楽が得意だった。自衛隊でもラッパの集合訓練では優秀隊員に選ばれたが、格闘技の選手に選ばれる体力はないはず」と言う。陸自隊員だった恵祐さんも「体力のある兄ををあえて要請隊員に選ぶのはおかしい」という。黒塗りの「公務災害報告書」は、日本共産党の赤峰衆議院議員の尽力で公開され、ようやくことの経緯の概要がわかってきた。
2010年8月に恵祐さんや勉さんは、真相究明を求める訴えを札幌地裁に起こした。英吉さんを体内大会の要請員に選抜したことの適格性を問うため、英吉さんと格闘相手の二人の身体能力検定記録の開示を求めた。しかし、これも黒塗り。理由は「隊員の練度、部隊の能力が推察され、わが国の安全を害する」というものだった。恵祐さんは「家族の体力データ一つ、なぜ開示できないのか。いじめではないのか。本当のことを知りたいのに国は何も応えてくれない」
札幌地裁は今年3月、訓練指導教官に注意義務違反があったと認め、国に賠償を命じ、判決は確定した。しかし、いじめや暴行の事実は認められないままである。恵祐さんは、兄の死を機に自衛隊をやめ沖縄に戻った。勉さんは言う。「秘密保護法ができれば、今度は資料の存在自体が隠され、真実を求める裁判も起こせなくなるかもしれない。ますます人権が無視され、隊員の命が軽んじられるのではないか」
『週刊朝日』
|