加藤のメモ的日記
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2013年12月22日(日) カラシニコフ

自らが考案、開発したものに自分の名前がつく。ふつうは晴れがましいが、そうとばかりは限らない。たとえば18世紀フランスの医師、ギヨタン博士。「苦痛の少ない処刑装置」を提唱したところ、できあがった断頭台はその名をとってギロチンと称された。博士は生涯悲嘆したそうだ。時代も事情も異なるが、古い史話にロシアの銃器設計者ミハイル・カラシニコフ氏の名が重なる。その名のついた自動小銃は紛争やテロのたびに登場してくる。世界に推計1億兆以上出回っているとされ、悪名の高さは際立つ。

「史上最も多く人殺した武器」とも呼ばれる。あなたの銃が世界で惨事を引き起こしている。かって取材した本紙記者に、氏は「哀しいことだ」と答えていた。その人の、94歳での訃報を聞いた。字の読めない兵士にも使いこなせる銃、というのが設計哲学だった。その簡便さゆえに途上国に流れ込んだ。<手軽とふカラシニコフがあるゆえに あああるゆえに子供の兵士>池田はるみ。日本の短歌にもその名は残る。

もっとも本人はこの銃で儲けることはなく、設計者としての誇りも揺るがなかったようだ。銃は私の意志とは無関係に一人歩きをしている、と。農家に生まれ、戦争がなかったら農業用トラクターの設計図を引いていただろうと語っていた。人々が戦争をやめて平和な仕事に就くことを「剣を鋤き(すき)に打ち直す」という。穀物満載で走るカラシニコフのトラクター。銃よりも、そちらの方がよっぽどよかった。



『朝日新聞』天声人語 12.25


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