加藤のメモ的日記
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2013年11月19日(火) 改憲に抗する

いま次世代に伝えたいこと

今年、俳優60年を迎えた、80歳の仲代達也さん。主催する無名塾の公演「ロミオとジュリエット」で全国を巡回中である。いま次世代に伝えたい憲法と平和への願い、演劇や映画への思いを語った。

私もそろそろ、俳優としても人間としてもフィナーレ(終幕)を迎えていい年齢に近づいています。もしこれからも無名塾を続けていくならば、次世代の人につなげなければいけない。「ロミオとジュリエット」は、格好の題材じゃないかと思ってやってます。

シェークスピアの書いたこの作品は、仲の悪い両家双方の一人息子と、一人娘が恋に落ち、悩み苦しみ、最期は死に至るという悲劇です。私はロレンス神父という、若い二人を支える役を演じています。よく知られたこの物語を無名塾でどうやるか。私は単なる恋物語でなく見えます。うがった見方かもしれませんが、かって大国と大国の代理戦争というものがありました。最も犠牲になったのは、小国の国民です。「ロミオとジュリエット」も若い人を犠牲にし、親同士が仲直りする不条理の芝居に思えるのです。

権勢争いというのもがいかに愚かか。そして人類と地球にとって、何が本当に大切なのかを考えてほしい。いま、一部の政治家が、「憲法を変えて国防軍だ」「世界平和に貢献するためには、日本も積極的に軍隊を出すべきだ」などと言っています。国民に事実を知らせない秘密保護法までつくるという。非常に危険な状況です。 私は昭和7年(1932年)生まれです。渋谷にいた頃、空襲で小学校の同級生の半分ほどが死にました。戦中・戦後の飢餓もいやというほど味わいました。

日本は憲法があったおかげで、とりあえず70年間、戦争を起こしたり、戦争で人を殺したりしてきませんでした。その憲法を変えるという悪しき動きには、どうしても抗しなければならないと思います。

私は無名塾の若者たちに、よく「生きるために食うか、食うために生きるか」と問いかけます。俳優は、ほとんどの者が食べていくのも大変です。「俺は生きるために食べるのだ」という精神を持たなければ、しんどい。人間は生まれて死んでいきます。その生きている間に、自分の生きる道というものを、異端でもいい、少数派でもいいから見つける。残り少ない役者人生ですが、次世代の人に考えてほしいことです。


『週刊文春』10.18


加藤  |MAIL