加藤のメモ的日記
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2013年05月25日(土) ハイリスク・ハイリターン

またぞろ投資金融商品で問題が起こっています。高い利回りを安全と称して販売し、集めた巨額に資金が消えたようだと言います。詐欺か否かは今後の調査で明らかになるでしょう。運用の実態がなかったということですから、何をかいわんやです。『高い利回り』=『危険』は常識なのですが、日本人は金融や投資の教育を受けていないために、毎年のように同じような事件が繰り返されます。素人だけではなく、年金などのプロも被害に遭うのが実態です。

かって金融機関がバタバタ倒れた時期、大阪の小さな銀行が破綻して窓口に押し掛けた預金者の一人にインタビューしているのをテレビで見たことがあります。「潰れる思てたよ。金利高かったからな」。年配の女性がしゃあしゃあと喋っているのを聞きながら、大阪のおばちゃんは凄いなぁと思いました。確信犯でゲームを楽しむようにリスクを取っていたのですから…。

リスクとリターン、見返りとそれに伴う危険は常に正の相関をしています。ハイリスク、ハイリターン、ローリスク・ローリターン、利回り、配当、報酬の高い見返りは高い危険を常に伴います。と言うか、危険を冒さない限り、高い見返りは得られないのが現実です。”虎穴に入らんずんば虎子を得ず”の諺は皆が知っている通りのことなのです。当該金融商品が危険かどうかは、直近の利回りが郵便貯金一年定期金利(現在は0.035%)の何倍かで簡単に判別できます。これを強欲倍数と名付けましょう。「安全な運用で年6%の利回り」を今回問題の商品は謳っていたと言います。

6÷0.035=171.428……。真に安全な金融商品の171倍という強欲倍数です。どう考えてもおかしいと気がつくはずです。私が1980年代前半、系統金融機関Nで融資業務についていた時のことです。私はCという外食チェーンを担当していました。Cは無理な店舗展開で資金繰りは苦しく、メイン銀行の対応次第で即アウトの可能性がありました。メインはズサンな融資で有名で後に破綻した長信銀で、極めてリスクの高い貸出先です。

あるひ、Cから新店舗開設資金の依頼が来ました。私はCへの融資はできるだけ早く回収しよう(ローリスク化)と決め、本来なら長期貸し付けになるものを短期にし、逆に金利は他行の長期貸しよりずっと高く設定(ハイリターン化)することにしたのです。その条件を上司に相談すると「お前は本当に恐ろしい奴だなぁ!」と笑いながらも交渉を許してくれました。私は正直、Cはまず蹴って来るだろう、それから再交渉すればよいと考えていたのです。しかし、こちらの条件提示をCの財務部長は何の逡巡もせずに受け入れました。私は拍子抜けすると同時に「ここはいつか潰れる」と確信します。目先の金が必要なだけだったからです。

Cはその後、バブルによる地価高騰で担保価値が上がったことに助けられて生き延びますが、2002年に倒産しています。私が実行した融資は無事に回収できて十分なリターンを得たと信じています。この世は常識でできています。安全で儲かるものなど是っ谷ありません。金融商品の場合、高利回りを謳うものは危険が極めて高く、高利回りで元本保証や安全を謳うものは…間違いなく詐欺です。


『週刊現代』5.25


加藤  |MAIL