加藤のメモ的日記
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| 2013年04月10日(水) |
中国の成長はもう終わる |
その根拠は、急速な少子化
「私が、中国の長期的な成長持続に希望が持てないと考える大きな理由の一つは、少子高齢化の急速な展開です。2010年秋に実施された人口調査の結果が昨年夏に公表されましたが、合計特殊出生率は1.18でした。北京市と上海市に至っては、それぞれ0.71人と0.74人です。少子高齢化で先頭を走るといわれる日本ですら1.4前後です。その日本ですら経験したことのない低さです。
また経済成長に直接影響するといわれる労働人口は、中国では15〜59歳だが、昨年早くも減少に転じたことが国家統計局から発表されました。出生率が本当に1.18しかないと仮定すると、総人口も2020年には減少に転じてしまいます。これまで世界中で行なわれた中国の人口推定は、過大な出生率の仮定に従って「総人口が減少に転じるのは2032年」と唱えてきましたが、実際は少子高齢化が10年早くやって来るのです。
昨年出たCIAなど、米国情報機関の長期世界予測も「中国は2030年までに米国のGDPを抜くだろう」と推計していますが、みな中国の人口動態を読み誤っていると思います。今、日本が身をもって体験している通り、少子高齢化がもたらす経済ダメ−ジは深刻です。総人口の減少が消費を抑制するだけではありません。労働人口の減少は、経済成長3要因の一つである「労働投入」を減らします。また稼ぎ手が減る一方、年金や預金で生活する高齢者が確実に増加していくために貯蓄が減少、「資本投入」も減少します。そんな時代が10年経たずに中国にも来ます。
これまでの中国経済成長は、農村部から出稼ぎに来る農民工の新規労働投入が大きな支えでした。今日では都市人口約7億人のうち、2億人がこの農民工です。ところが、以前は無尽蔵とも思われた出稼ぎ労働力が最近枯渇し始め、中国に「人手不足」現象が出現しています。このせいで都市のブルーワーカー賃金が急上昇し、コスト上昇圧力になっています。このコスト上昇を生産性向上、付加価値向上で吸収しないと、中国はインフレ水膨れの経済になり、実質成長ができなくなります。では生産性、付加価値を上げられるか?今のままでは、見通しは暗いと言わざるをえません。
中国の今の経済が「国家資本主義」というべき形態だからです。すなわち、中国共産党が一党独裁を行なう政府と、その影響下にある国有企業主導の経済です。いわば「親方五星紅旗」。それでは生産性は上がりません。付加価値向上の度合いは、大卒者の仕事や暮らし向きで計ることができますが、ブルーカラーである農民工の月給が3000元ぐらいまで上がっている一方、高学歴者にはいい仕事がなく、給与も伸び悩んでます。
その結果、今や農民工の給料が高学歴者の給料を上回る逆転現象が起こっているのです。これでは何のために大学へ行くのかわかりません。中国が生産性向上、付加価値向上を実現するには、過去10年程で顕著になった「国家資本主義」という改革の逆行を再度逆転させることが不可欠です。しかし、共産党や政府は最大最強の既得権者です。習近平総書記は改革加速への意欲を見せていますが、これほど巨大な既得権益を整理することは至難の技で、格付け会社風に言えば「見通しはネガティブ」です。
短期的には過剰投資の後遺症、中期的には「親方五星紅旗」による効率低下、そして長期的には少子高齢化による成長ブレーキ…。中国の台頭はすでに終焉していると認識すべきなのです。2008年のリーマンショック後の中国の劇的な景気回復と、日米欧先進国の経済低迷は、中国人の世界観を変えました。中国の成長は今後急速に減速します。GDPの1.5%リンクで急増してきた軍事費の伸びもしかりです。実際には、日本も中国も少子高齢化の厳しい試練を潜り抜けなければなりません。幻想に囚われて、いつまでも解決のつかない領土争いで、経済関係を傷つけている現状は愚かの極みです。
中国ビジネスコンサルタント 津上俊哉
『週刊現代』3.9
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