加藤のメモ的日記
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| 2013年03月03日(日) |
認知症は香りで症状改善する |
部屋に入り、いい香りに緊張感が解けていく。この気持ちよさの香りに、認知症の改善に効果があるという。
今ふうにいえばアロマセラピー。植物の花や葉、樹皮などから抽出し、香り成分を含むのが精油。その精油を使った芳香療法のことである。
―香りと認知症とは関係ないようだが?
「実は深い関係がある」というのは、鳥取大学医学部の浦上教授。認知症の診療と研究を20年以上続けている。「認知症の中核症状は、物忘れなどの記憶障害です。先行して嗅覚障害が出てくることがわかっています」記憶障害と嗅覚障害は関係があるとは驚きである。そもそも人は香りをどう感じとっているのか。
香りの物質は、鼻の穴を通って、内側にある嗅上皮に届く。嗅上皮には嗅覚神経が集中し、香り情報を受けて、大脳辺縁系(海馬や扁桃体を含み、記憶や感情に深くかかわる)に伝える。続いて、香り情報は視床下部(自律神経や内分泌系を調節する)へ伝わる。視床下部は香り物質の種類に対応する神経伝達物質を放出し、さまざまな作用をもたらす。気分が集中したりリラックスするのもそうである。
認知症の約半数を占めるアルツハイマー病の大きな特徴は、大脳委縮をともなう神経細胞の大量の脱落である。初期は、海馬などに老人班と呼ばれるアミロイドβタンパクが蓄積して現れる。香りを感じ取る領域も、記憶障害を起こす領域も、同じ大脳周辺縁系で起こる。「それで私たちは、認知症の患者さんにアロマセラピーを用いて、嗅覚を刺激し、アルツハイマー病患者の認知機能の改善を試みました」
精油を選んで
アロマセラピーは、経験的に安全性と作用がほぼ確認されている。アルツハイマー病患者の認知機能の改善を目的とする場合は、どういう香り成分をを含む精油を選ぶかが、とても重要になる。午前中は、集中力を強めて交感神経を優位にする精油がよい。午前と夜間とで精油を変更するのは、人の一日のリズムに合わせ、同時に嗅覚の慣れを生じにくくさせるためである。
嗅覚刺激といっても、匂いを嗅ぐだけだがそれで効果があるのか?アルツハイマー病患者へのアロマセラピーの有用性を検証した報告がある。『日本認知症学会誌』19号2005年によると、対象は、介護老人保健施設入所中のアルツハイマー病患者10人を含む高齢者28人。平均年齢85歳。アロマセラピー実施期間は28日間。
午前9〜11時に集中力を高めるローズマリー2滴と、レモン1滴の混合精油をフィルターに垂らし、拡散器で放散する。設置場所は居室に1個とラウンジ内に2個である。成果は、軽度〜中等度患者の認知機能を著名に改善した。「予想以上の効果でした。私たちの報告は世界で初めてのものでした」(浦上教授)
―アルツハイマー病が高度に進んでいても、アロマセラピーは効くのか。
高度に進んだ患者数を65人に増やし、精油の種類や期間などの条件を同じに実施した。結果は、認知症機能全体が改善した。つまり、アロマセラピーは軽度から中程度の認知症患者に効果が高い。しかし、高度に進んでいても一定の効果がある。浦上教授は「老人施設など施設単位でも認知症が高度に進んで言語機能の低下、コミュニケーションが取れなくても実施できます」
―嗅覚刺激が認知機能を改善させるのはなぜか
「記憶に深くかかわる海馬などには、新しい神経細胞の発生が続く領域があります。嗅覚刺激が神経細胞の発生を促進するのではないか。嗅覚刺激法は、認知症の中核症状である、記憶障害に直接働きかける治療として活用できると考えています」
―認知症が進行すると、物盗られ妄想や暴言、徘徊など周辺症状が出てきます。これら周辺症状緩和にアロマセラピーは?
「対症療法として用います。興奮状態を落ち着かせる精油、例えばラベンダーを選ぶとか。患者さんの生活の質を改善し、介護者の負担を減らすことができます」
―これからはどうか。
「アロマセラピーは費用が安く、副作用も少ない。今あるアルツハイマー病治療薬に併用もできます。ディケアなどの高齢者施設に用いることで、認知症の予防と治療に有益と思っています」
『週刊朝日』
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