加藤のメモ的日記
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2013年02月27日(水) ペプチドワクチン開発(上)

ワクチン療法で免疫を高めがんを抑える

患者の免疫力を高め、がん細胞の増殖を抑える「ワクチン療法」が世界的に注目されている。このうちの一つ、ペプチドワクチン開発の中心人物で、元内閣官房医療イノヘーション推進室長の中村シカゴ大医学部教授に、ワクチン療法や日本のがん医療について聞いた。

著書「ガンワクチン治療革命」(講談社)で、ペプチドワクチンなどを用いたワクチン療法を、外科療法(手術)、放射線療法、化学療法(抗がん剤)に次ぐ「第4の療法」としている。「本来は免疫療法というべきだが、日本で免疫療法というと怪しげなものも含まれる。あえてワクチン療法と呼んでいる。米国ではすでに前立腺がんの治療用ワクチンが認可された。世界には科学的に実証されつつある免疫療法がたくさんある」

―研究はどの程度進んでいるのか。

「2006年から国内約60カ所の病院に声をかけ、臨床研究を進めてきた。対象とした患者は約1700人で、うち約1000人が進行がん。中には5年以上も進行を抑えられている人がいるし、稀には胃ガンや、すい臓ガンから肝臓に転移した腫瘍が消えた人もいる。治験の最終段階まで進んでいるものもあり、近く実用化されると信じている」

―実用化に向けての問題は?

「ワクチン療法の特徴は、腫瘍が小さくならなくても、がんの増殖が抑えらえ、長生きできること。米国の食品医薬品局(FDA)はこの観点で治療効果を評価するルールをつくったが、日本にはない」

―日本では何で評価しているのか。

「例えば、抗がん剤は腫瘍が小さくなることで『効果がある』と評価される。だが、放射線でも抗がん剤でも、免疫力が加わって効果が出るというのは、世界的な常識になりつつある。日本では権威あるところが最初にワクチン療法を『だめ』と信じたら、何を言おうが耳を貸さず、目を向けない。大きな問題だ」

―ペプチドワクチンの副作用は。

「約1700例のうち、全身的副作用の可能性が否定できないものは、2,3例である。患者は週1回、皮下注射に通うだけなので、負担は小さい。抗がん剤で一時的に腫瘍は小さくなっても、副作用で患者が弱り、生存期間が延びていないケースはたくさんある。患者のために医療はどうあるべきかを、もっと考えなければいけないと思う」


ワクチン療法に関する問い合わせは電子メールで、「東京大医科学研究所中村裕輔研究室」へ。電話での問い合わせには応じていない。

〈ペプチドワクチン療法〉
免疫力を高めてがん細胞を退治する治療法。がん細胞の表面には特有のペプチド(アミノ酸が連なったもの)があり、それを目的に免疫細胞が攻撃する。人工的に大量のペプチドをつくって注射することで、免疫細胞は「敵が大量に押し寄せた」と勘違いし、特定のリンパ球を大量に増やして、がん細胞を攻撃する。大腸、肝臓、膵臓、肺、頭頸部(とうけいぶ)などのがんのほか、女性の卵巣、子宮頸、乳のがんなどで臨床研究が進められている。



『東京新聞』2.26


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