加藤のメモ的日記
DiaryINDEX|past|will
| 2013年01月05日(土) |
政党は完全に壊された |
野田首相は、開票当日、午睡から目覚めると、午後8時前から始まったNHKの選挙特番を茫然と眺めていた。「自公で300議席へ」ザ・プリンス、パークタワー東京内に開設された民主党の開票センターでは、現職閣僚らの相次ぐ落選という悲報に、細野政調会長が絶句していた。同時刻、民主党本部では選対の職員らがあまりの惨状にがく然とし、ある者は怒りから椅子を蹴り飛ばしていた。党の大敗北と縮小により、彼らは翌日から失業の危機に晒される。
やがて日付が変わる頃、野田氏や興石幹事長のもとに、「比例代表での民主党の得票数は約960万票」という報告が届いた。前回2009年の選挙での得票数は2980万票。「2000万票も民主党を見放したのか…」有権者が突きつけた冷酷な数字を前に、興石氏も声を失っていた。実に残念か結果である。民主党が総選挙で壊滅的な大敗北を喫したことが残念なのではない。3年3ヶ月前、有権者が思いを託した一票が、こんな無残な形で裏切られることになってしまったことが、ただただ残念でならない。
改選前の4分の1以下、57議席への激減…。民主党の議員たちは、年の瀬・新年を前に「無職」に成り下がってしまった。その恨みつらみは必然的に野田氏へと向かう。今回の総選挙であえなく落選した、民主党の川内博史氏は怒りを隠さない。「民主党はマニュフェストにもなかった消費増税に踏み切ったことで、完全に国民の信頼を失ったのだと思います。ここまで惨敗してしまうと、当分の間、民主党が再起するのは無理です。野田さんは党代表を辞任したぐらいでは済まない。まさに万死に値する」野田さんは完全に民主党をブチ壊してしまった。なぜ、こんな時期に解散したのか。直接問いただしたいですよ」
中には、敗北の原因について懊悩するあまり、こんな穿ち過ぎな見方をする落選者もいる。「野田さんは完全に解散時期を間違ったわけですが、私が聞いたところによれば、裏で引き金を引いたのは財務省だったと。野田さんは補正予算を組んで景気対策をし、それで支持率を上げて総選挙に臨みたかったのに、財務省が野田政権で補正予算を組むのを許さなかったというのです。本当なら、あれだけ野田さんは財務省のために働いたのに、最後はハシゴを外されて自爆せざるを得なかったことになりますね…」
確かに財務省は以前から「次は自民党に政権が戻る」とにらみ、安倍氏に接触していたとされる。消費増税法案を成立させた野田氏が、賞味期限切れでお払い箱にされたというのは「いかにも」という話だが、真相は不明だ。野田氏は地滑り的な大敗を喫した翌日、藤村官房長官、樽床総務相、城島財務相、田中真紀子文化相ら、落選した8人の現職閣僚たちに、「すまなかった」「ごめんよ」とひたすら謝罪していたという。しかし、改選前の4分の1以下という、今回の敗北の仕方は異常だ。
政治ジャーナリストの山田氏もこう語る。「この大敗の責任は重大で、本来は代表辞任ですむ話ではなく、懲罰として党を除名されてもおかしくない。野田氏が年末解散を決意したのは、たとえ民主党が大敗しても消費増税が実行されればそれでよし、という考えがあったからです。ところが自公連立政権では安倍氏がデフレ対策優先論者で、公明党はもともと増税には慎重な立場。今後消費増税の先延ばしで一致するかもしれません。すると野田氏は、民主党を潰したうえ、自分の目的だった消費増税にも大敗することになる。まさに最悪の結末ですね」
今回生き残った57人の中核は、松下政経塾出身者ら、民主党結成時から参加している”オリジナルメンバー”このグループと途中参加の「小沢派」の抗争がこれまで民主党の迷走を招いていたのは間違いない。しかしだからといって、選挙にまでその怨念を持ち込み、小沢氏にシンパシーを持っていたというだけで足を引っ張るとは正気の沙汰とは思えない。結果的に彼らは、旧小沢派と関係ない同志やその秘書たちまでも、大量に路頭に迷わすことになった。
落選した民主党幹部がこう話す。「今回は、連合が末端の選挙区で全く機能してくれませんでした。上層部は動いてくれた形跡はあっても、末端の組合員らは『俺たちにはもう関係ない』という感じでした。連合自体もこれで崩壊したんじゃないですかな。野田さんは党だけでなく、連合の組織も破壊したんですよ」鈴木もこう語る。
「連合は今回、実質的に自主投票でした。最近の野田民主党は、消費増税に加え、純化による保守化路線をひた走っていました。連合にしてみれば、何で必死に応援しなければいけないのか、という思いがある。実は11月25日の段階で、民主党役員室では、平野元官房長官や城島財務相など、これまで連合の力で当選してきた議員の落選予想が出ていたんです。ところが執行部はテコ入れしなかった。純化していくために、労組の支持を受けた組織内候補は不要と判断したんでしょう」
これだけ負けても反省しない
かって連合は小沢氏と蜜月の関係にあった。ここでも結局は「小澤憎し」が作用したのか。だが連合の助けがなければ、民主党はほっと出の日本維新の会と同じレベルでしかない”中小政党”だということが証明されてしまった。この体たらくでは、民主党が再び、自力で政権を取り戻すのは絶望的のように思える。200人近い同志の屍と引き換えに、すっかり身軽になった”オリジナルメンバー”は、表面的には危機感を表情に浮かべながらも、今や「次期代表」の座をめぐって鎬を削っている。
「岡田氏、前原氏、さらに細野氏と、次期リーダー候補は変わり映えがしません。そんな中、玄葉氏が野心満々で『同じ松下政経塾出身の前原さんも野田さんも代表をやったんだから、次は自分の番じゃないか』などと。周囲に漏らしていました」(民主党中堅代議士)かって党の看板といわれた幹部たちは、鳩山元首相が不出馬、不戦敗。菅直人元首相は投票日直前に交通事故を起こして失笑を買ったうえ、小選挙区で敗北、ぎりぎり比例で復活当選という、元首相らしからぬ醜態を晒した。
”影の総理”と呼ばれた実力者・仙谷由人元官房長官は、地元に張り付いて必死で選挙運動をしていたが、落選。党内のお騒がせ役で存在感を示していた田中真紀子氏や、ベテランの鹿野元農水省らもいなくなった。「純化」を目指す民主党の“青年将校”らにしてみれば、目の上のたんこぶたちが粛清され、「負けたけど俺たちの時代が来た」という気分でいるかもしれない。
だが、果たしてそう上手くいくだろうか。「294議席で圧勝した安倍自民党ですが、悩みは参議院選で相変わらず民主党が多数を占める”ねじれ”状態。自公で衆院の3分の2を占め、法案の再可決は可能とはいえ、手っ取り早く民主党の参議院議員の一本釣りを狙ってくるでしょう。そうなれば民主党はますます縮小し、国会での存在意義すら薄れてしまう。党の崩壊はもっと早まるかもしれません」(民主党閣僚経験者)
『週刊現代』1.5
|