加藤のメモ的日記
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錬金術と税金私物化にまみれた石原ファミリーのアンタッチャブル
小国に匹敵する巨大な財政を誇る東京。石原慎太郎は約12年間にわたってその頂点に君臨し続けてきた。絶対的な力の背景には、どんな秘密があるのか。首都を”支配”する本当のうまみとは何か?、マスコミはなぜ、まともに批判できないのか?その「金脈」と「人脈」に切り込み、「石原タブー」の正体に肉迫する。
東京都庁の取材で、筆者たちが実際に体験したことだ。ある職員は、「しゃべったことが活字になると、すぐに犯人捜しが始まり、上司に呼び出される」と怯えていた。部局に取材を申し入れると、決まって「いつ記事になるのか。どんな媒体に掲載されるのか」と何度も聞いてくる。些細な取材でも必ず課長クラスが対応するし、知事日程(石原慎太郎知事の出勤状況)について情報公開請求の手続きに赴けば、担当課の職員が3人も現れて、請求内容を確認する。
都庁では情報統制が厳しく敷かれているに違いない。筆者たちはこれまで大阪府や大阪市など”伏魔殿”と呼ばれる行政の舞台裏を取材してきたが、今回のようにまるで監視体制の中で取材をしているような気分にさせられたのは初めてのことだ。それはあたかも、都政が「独裁者」を守るために存在している。そんな疑念さえ抱きかねないものだった。
今から16年前、臨海副都心開発の失敗で退場を余儀なくされた鈴木俊一知事(故人)にかわって、タレントで作家の青島幸男氏(故人)が知事に就任した。有権者は、無駄な開発の中止に大きな期待を寄せたが、見るべき成果もなく、青島知事に失望した。そして1999年の都知事選。「強いリーダー」を夢想する多くの人々は、芥川賞作家で国民的俳優・石原裕次郎(故人)の兄でもあり、竹下内閣時代には運輸大臣も経験した”憂国の志士”石原慎太郎候補に票を投じた。以来、約12年間3期にわたり、石原知事は有権者の幻想をつなぎとめ、知事の権力を手中に収めてきた。
この間、石原知事は、人々の耳目を集める大胆な公約次々とぶち上げてきた。しかし、その中身をつぶさに検証すると公約の実現どころか、ごまかしと破綻の連続である。たとえば、中小企業のために設立された「新銀行東京」は、都議会の与党議員(自公、民主)や闇社会の喰いものにされ、事実上の破綻に陥った。その挙げ句、1000億円をドブに捨てている。東京五輪誘致も失敗し、150億〜200億円ものカネが海の藻屑となって消えた。
東京都の財政規模は、フィンランド一国にも匹敵する大規模なものである。GDP(国内総生産)換算した経済力は100兆円にも上り、都市としては世界一の規模を誇っている。東京一極集中といわれる所以だが、そこから得られた税金は、「都市再生」と称した、高速道路や超高層ビルを乱造する再開発事業につぎ込まれ、ゼネコンをはじめとする大手企業に巨大ビジネスの場を提供してきた。
同じ構図は、羽田空港の再拡張公費(国際線のためのD 滑走路建設)や、世間を騒がせている築地市場の移転計画にも当てはまる。石原知事は、世界的なブランドである築地市場を、東京ガス豊洲工場跡地という、日本でも最大級の土壌汚染地帯に移転させようとしている。その狙いは、東京に残る最後の一等地「築地市場跡地」の売却であり、跡地の再開発をめぐる利権だ。
筆者たちが、取材を通じて得た石原都知事の実像は、大統領に近い強力な権限を行使し、都政を私物化し、公金を湯水のごとく使って遊興にふける醜悪な権力者の姿である。一回の海外視察に2000万円をかける首長が、石原都知事を除いて、どこにいるというのか。勤務態度もほめられたものではない。都庁に出るのは週に2,3日程度。1ヶ月の半分は登庁しない月もあった。東京都の報道課が「私たちも、知事が外で何をしているか知らない」と言わざるを得ないほどで、これほど仕事をしていない首長は、日本全国でも石原知事だけだろう。
まるで王侯貴族のようだが、なぜこんなことがまかり通っているのか。責任の多くは在京のマスコミにある。定例記者会見の様子を見ればわかるが、記者たちはまるで腫れ物にでも触るかのように石原知事に接している。気に入らない質問が出ようものなら、逆切れして怒鳴りつけるので記者はすっかり怯え切っているのだ。
一方では、在京のマスコミ論説委員、社会部長と石原知事、特別秘書は知事交際費を使い、定期的に懇談会を開いている。さらに見落とせないのが、大手マスコミそのものが石原知事の推し進めてきた「都市再生事業」の当事者として、深く”実利”に関わっていることだろう。たとえば、東京都や皇居に近い大手町エリア(通称三菱村)は、石原知事が進めたビルの容積率や建築条件などの大胆な規制緩和の恩恵を受け、超高層ビル群の一大集積地になっている。その再開発計画を進めてきた大手町・丸の内・有楽町地区再開発計画推進協議会のメンバーには、朝日新聞も加わっているのだ。これでは石原都政のチェック、監視役はできない。在京メディアには「石原タブー」があるといわれる所以である。
東京都議会も同様だ。自民、公明の”石原与党”はいうまでもなく、築地市場移転計画などに異議を唱えて最大閥となった民主党ですら、海外視察を隠れ蓑にした豪華な大名旅行で定期的に懐柔されている。
こうしたなか、石原知事は2011年4月、3期目の任期を終える。同じ月には都知事選が予定されているが、現在、78歳の石原知事が出馬するかどうか、その去就が注目されている。石原知事をよく知る政界関係者は、「出馬は5分より少し上になった」といい、こう分析した。「石原知事には、なんとしても五輪誘致(2020年)を決めたいという思いがある。加えて、下馬評に上がっている民主党の蓮舫氏などが出馬し、当選することになれば、新銀行東京をはじめとした石原都政12年間のスキャンダルを暴かれるかもしれない。それを恐れているはずで、長男の石原伸晃自民党幹事長も、そのことを暗に心配している節がある。
現在、民主党の支持率は低下していて、”石原与党”の自民・公明の力で都議選を勝ち抜ける可能性も出てきた。そうなると4選出馬もありうる。あと4年も知事を続ければ、みんなスキャンダルのことなど忘れるはずだと、踏んでるんじゃないか」五輪誘致計画は、大型開発や高速道路建設など、9兆円規模になる大規模プロジェクトと深く関わっている。石原人脈に連なるゼネコンや財界にとって、石原知事の庇護のもとに浮上した巨大プロジェクトが中断すれば、困ったことになるだろう。
しかし、石原知事が進めてきた「都市再生」は、すでに行き詰まりを見せている。林立させた超高層マンションの売れ行きが鈍っている現実に、それが象徴されている。”土建バブルの亡霊”を追う政策を続けることは、東京という巨大都市の破綻にもつながりかねない、極めて危険な選択に思える。本書は、これまで何度も書かれてきた”石原慎太郎論”とは大きく違っている。従来の書は、その過激な言動に振り回され、キャラクター論に終始してきたきらいがある。本書は、石原知事をとりまく”カネ”と”カネづる”の問題について徹底的に追跡したものだ。メディアと過激な言動を駆使し、常に人々の耳目を集めてきた劇場型政治家のパイオニア「石原慎太郎」。その裏には、まさに「黒い都知事」としかいいようのない実像があった。
『黒い都知事・石原慎太郎』
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