加藤のメモ的日記
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2012年12月25日(火) 財務省の裏メッセージ

安倍晋三総裁の誕生で自民党は急速に支持率を回復した。一方で消費税の地方税化、地方交付税制度の廃止を掲げる日本維新会。そして石原慎太郎も政局の今後を左右しそうで、永田町は今にも大きな政界再編が起こりそうな混沌期に入った。そうした中で、財務省が興味深い動きに出ていることはほとんど気付かれていない。来年度予算をどの政権が仕切るかは政治的な大問題だが、したたかな財務省は今のうちからそこに「暗号」を忍ばせたのだ。

もちろんあからさまなことはしない。舞台は財務省の支配下にある財政制度等審議会という「御用審議会」である。財政制度等審議会財政制度分科会が11月1日に開かれた。これは財務省が学者などへ来年度予算などの状況を「レク」して応援団になってもらうための会議である。資料は財務省が用意し、予算査定の現場にいる役人が説明するので、財務省の考えがよくわかる。1日の会合で注目されたのが、公立小中学校で1学級の生徒数を35人以下にす櫓という少人数学級を実現するためには教職員を5年間で2万7800人増やす必要があるとして、来年度予算の概算要求でそれに必要な予算を要求しているが、これに財務省が噛みついた。

子供が減少するので教職員は必要はない。学級担任ではない「担任外」の教員が16.5万人と教員数65万人の約3割もいる。少人数学級の実現は必ずしも教育の向上にはつながらない、などの理由から、公立の小中学校の教職員を5年間で1万人削減できるという対案を出したのだ。教職員の定数は現在70.3万人。文部科学省の主張する施策(定数改善)を実現すれば5年後に71.2万人となり、その分追加事業費が1800億円かかる。一方、財務省の対案では教員1人当たり生徒数を維持しながらも、定数改善を行なわない状態がら支出を5年間で650億円減らせるので、財政再建にも効果があるという論理だ。

そもそも文化省の予算は年間5兆4057億円で、そのうち文教関係費が4兆1115億円を占める。定数改善を行なわなければ教職員定位数は減っていき、その自然減で事業費は5年間で1200億円程度減少する。つまり、仮に今回の文科省の要求を半分認めたとしても、事業費は300億円減少する計算になる(5年間)教職員定数は民主党の支持母体である日教組(日本教職員組合)の関心事項である。ほどほどの予算をつけて相手の顔を立て、政治的な”火中の栗”を拾わずに穏便に済ますことも可能だが、財務省はより厳しい案を出してきたというわけだ。

これを単なる「予算カット」の話だと考えると現実を見誤る。野田民主党政権は支持率が下がり、どんどん力を失っている。財務省は野田政権を誕生させ支えてきたが、ついに見限ったという政治的なメッセージと捉えたほうがいい。教育は国民的な話題になりやすい。とくに「少人数学級」は国民に親しみのあるテーマだ。それをあえて持ち出すのは、教育を次期衆院選の争点にしたいという安倍自民党へのエールともいえる。

同じく教育改革を標榜する橋下日本維新の会向けの話は全くないところが、財務省の現実的な政治家選びの表れでもあるのだ。いずれにしても、国民ではなく財務省が政治家を選ぶのは、好ましいことではない。



『週刊現代』11.24


加藤  |MAIL