加藤のメモ的日記
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2012年12月14日(金) 日本企業はもう勝てない

スピード感が違いすぎる

「日本の製造業淵で死にあえぐのは、感情としては忸怩たるものがあるが、産業史の必然だ。ソニーの今回の決算にしてもシャープやパナソニックよりましだと言われているが、黒字を出しているのは映画、音楽、金融部門であり、モノづくり企業としては惨憺たるものである。イギリスの繊維産業は見る影もなく、アメリカのGM(ゼネラルモーターズ)は2009年に破綻した。パナソニック、シャープ、ソニーが”かっての姿”に戻ることは不可能だ。日本の電機メーカーはもう中国、韓国勢に勝てない。(元ソニー幹部)

三義要革命を世界で先駆けて繊維や鉄道産業を起こしたイギリス。なかでもマンチェスターはその中心地のひとつで、巨大な繊維工場が立ち並ぶ一大工業地帯として世界に名を馳せた。大西洋を越えると現れるのはアメリカだ。大量生産方式を武器に高性能な車を世界中にばらまいたGMが象徴するようにこの国が第二次産業革命の覇者であった。さらに太平洋を渡ると、日本にたどり着く。ソニーのウォークマンが全世界で大ヒットし、松下電器が米タイム誌に巻頭特集され、トヨタの「カンバン方式」を真似しようと世界中の企業が殺到した。アメリカに果敢に挑戦を挑み勝利を勝ち取ったのは、ジャパン・アズ・ナンバーワンと称された日本の製造業だった。

そして今、無情にもモノ作りの中心は西へと回り、韓国のサムスンやLGがテレビや携帯電話、家電を世界中で売り歩き、日本の株をすっかり奪ってしまった。さらに後ろにはインドが控えている。日本の企業を相手に商談すると、必ず最後に『持ち帰ります』と言う。社内で何個もハンコをもらって決裁してからじゃないとビジネスが進められない。中国や台湾、韓国の、メーカは、プライベートでトップが世界を飛び回って、トップ同士で直接交渉する。

その場で納品の量から価格、時期まで社長がすべて決定するのだからスピード感が違う。それに彼らは日本企業みたいに中間管理職が何人もいる組織じゃなくて、ほぼ全員がプレイヤー。かってサムスンが海外に人材を送り出すとき、片道切符で行かせ、業績が上がればその分は給料を与えるというスタイルで、”一攫千金”を狙う猛者たちが次々に新興国を開拓していったそうだ。海外駐在といっても中心都市にしか人を送り込まず、借り上げ住宅で優雅な生活を送らせている日本企業が勝てるわけがない。

見て見ぬふりはもうできない

世界中に張り廻られたマーケティング拠点から売り上げデータを集積し、最新の需要がどこにあるのかを見つけたら即座に商品化し、トップダウンでカネと人員を集中投下して一気に市場を制覇していく。市場は秒単位で変化していくのだから、トップの指示は朝礼暮改どころか「朝令朝改」。これがグローバル時代の常識だが日本企業のサラリーマン社長は大胆な決断も改革もできず、ダラダラと赤字を垂れ流し続けている。

「勝負はずっと前についていた。日本人が見て見ぬふりをしていただけです」電機業界の取材を長く続ける経営学者でジャーナリストの長田氏は言う。「2007年に欧州を回って電器産業の実態を取材したとき、パリの家電量販店をのぞくとシャープのテレビは1台ぐらいしか置いてなかった。パナソニックもちょこちょことある程度。一方で売り場の中心にドカンと展示されていたのがサムスンで、圧倒的な存在感でした。サムスンは当時すでにフランスでのテレビ販売シェアの4割ほどを握っていたから当然といえば当然。パリの街角でシャープはどこの国の会社かと尋ねると『韓国かな』との答えが返ってくるほど、日本企業の存在感は薄かった。

同じ時期、日本ではサムスンが日本の家電市場から撤退するとのニュースが流れていた。これを見て多くの日本人は『やっぱり韓国製品は安かろう悪かろうでダメなんだ』と思っていたが、現実はそうではなかった。サムスンはこんな効率の悪い日本に資本投下するよりも、世界で勝負したほうがよっぽど未来があると考えていたわけです。そして実際、欧州市場はサムスンが次々に支配していった」

日本企業が「まだまだ優位性がある」と“慢心”していた技術力でも中国・韓国勢に追い抜かれている。象徴的だったのが、今年1月、米国ラスベガスで開かれた国際家電見本市で、来場客が殺到したのが、韓国の両雄サムスンとLGのブースだった。お目当ては両社が初めてお披露目した55インチの有機ELテレビ。厚さ数mmと極薄なうえ画像は極めて美しく、しかも液晶より省エネ。初めて間近に見た観客たちはカメラのシャッターを押し続けた。

「有機ELテレビは次世代テレビの本丸で、日本勢も開発部隊をつくってやって来たが、完全に出遅れた。今やサムスンが世界の有機EL市場の8割を独占している。中国最大大手の京東方科技集団(BOE)でさえ、来年から中小型の有機ELパネルの量産に入るといわれている。パナソニックとソニーが今年、有機ELの共同開発をすると発表したが、いまさら何ができるというのか。日本のメーカーは『技術で勝ってビジネスで負ける』といわれてきたが、今は違う。『技術でもビジネスでも負ける』時代に入った。(経営コンサルタント)


『週刊現代』11.24


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