加藤のメモ的日記
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三菱、三井ほか財閥系企業の”隆盛”は日本低迷の象徴だ
旧財閥系の大企業が大儲けしている。2012年3月期連結決算を見ると、五大商社の三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅は純利益の全社合計が1兆6116億円となり、過去最高を記録した。3大メガバンクの三菱UFJ、三井住友ファイナンシャルグループ、みずほファイナンシャルグループの最終利益の合計は約2兆円に達している。不動産大手5社の三井不動産、三菱地所、住友不動産、東急不動産、野村不動産が東日本大震災の影響を受けたにもかかわらず、最終利益は全社合計で2115億円だった。まさに笑いが止まらない状況なのだ。
とくに商社は、円高で多くの企業が青息吐息の中、差益を十分に利用している。加えてこれほど商社が強いのは、原油や鉄鉱石などの資源価格が高騰したからだ。油田や鉱山などの資源開発は長期でハイリスクの事業であり、なかでも地下深く埋蔵されているシュールガスなどの非在来型天然ガスの採掘には高度な技術と、多大な初期コストが必要となる。だが、5大商社には系列銀行などがいくらでもファイナンス(融資)してくれるから、開発プロジェクトを数多く手掛けることができる。資源開発は、たくさん掘れば当たる確率が高くなるので、潤沢に資金を集められるところが勝つのである。
不動産も同様で、三井不動産や三菱地所といった財閥系の不動産大手は十分な資金をもとに大規模開発で収益を上げている。とくに最近はこの2社が全国でアウトレットモールを次々と展開し、商店街や地場の百貨店を直撃している。裏を返せば、メガバンクをはじめとする日本の銀行は、5大商社・不動産のような系列の大企業には手厚い一方で、中小企業や企業化へのファイナンスには極めて消極的だ。日本にグーグルやアップル、フェイスブックのような新しい成長企業が登場しない究極的な理由がここにある。
企業家を苦しめる”歴史の後退”
本来、企業ファイナンスには3つの種類が必要だ。まずは銀行によるもの。これには、パナソニックの創業者・松下幸之助さんの有名な逸話がある。パナソニックもかっては浪速(なにわ)の中小ベンチャー企業だったが、住友銀行淀屋橋支店は幸之助さんの人物を信用して融資をしてくれた。だから幸之助さんは死ぬまで住友銀行の恩を忘れず、すべてのキャッシュを淀屋橋支店に預けていた。
つまり、昔の銀行は「経営者の顔を見て」ベンチャー企業や中小企業にも貸していたのだ。それが大企業のすそ野を固める外注や下請けの分厚い産業インフラとなって戦後日本の工業化を支えたのである。ところが、今の銀行は経営者の顔を見ることなく、不動産などの担保ペースで、事業計画の達成率や返済状況など金融庁のマニュアルに従って貸すことしかしない。金融危機のあと、銀行の合併が相次いだため、銀行と企業経営者との人間関係は成り立たなくなった。
例えば私は40年前から一貫して三和銀行と取引してきたが、東海銀行と合併してUFJと名乗るようになってから担当者がクルクルと代わるようになった。さらに三菱銀行と合併すると旧三和の人々はどこかに追いやられ、人間味のない三菱の出身者が幅を利かせるようになった。結局銀行とはいえ、無機質な機械のようなものになり、お金の相談をする、ということもなくなってしまった。
今の銀行は、会社に担保がない場合は経営者に個人保証を求め、倒産したら身ぐるみ剥いで生活が成り立たないようにしてしまう。まさに「晴れている時に傘を貸し、雨が降ってきたら傘を取り上げる」のだ。経営者の人物と事業計画に融資するアメリカでは、あり得ないことである。日本の場合はいずれのファイナンスも機能していないから、いつまでたっても若い企業、新しい企業が育たない。
来年3月末に、中小企業の借入金の元本支払いの延長や利益の引き下げを金融機関に求めたモラトリアム法(中小企業等金融円滑化法)が終了する。そうなると担保ベースでしか融資しない銀行は資金回収に走るから、モラトリアム法によって生き延びていた中小企業は、続々と破綻することになるだろう。ベンチャー企業を取り巻く環境は、ますます悪化する様相を見せている。
その一方では、旧財閥系の総合商社やメガバンクがわが世の春を謳歌しているわけで、これは”歴史の後退”にほかならない。軍部の片棒を担いで日本を戦争に追い込んだ財閥は解体されたはずなのに、気がつけばそれを再編・強化する方向に進もうとしている。このままでは日本は明治時代に逆戻りである。今こそ政府が若く有望な企業化を支援する政策をとり、too big too fail(大き過ぎて潰せない)の論理で旧財閥系の大企業を優遇している現在の政策を反転しなければならない。でないと、未来永劫、この国に新しい企業や経済の活力は生まれないだろう。
『週刊ポスト』9/14
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