加藤のメモ的日記
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2012年09月07日(金) 日本の金持ち

カネを使わない不思議な民族

お金を貯め込むだけで使おうとしない金持ちがあまりにも多い。これこそ、日本経済の閉塞の原因です。戦後に財をなした今の高齢富裕層は、贅沢に興味がなく、むしろ預金額が増えることに強い喜びと快感を覚えている。莫大な金融資産を自分が死ぬまで文字通り「死蔵」し、経済の活力を殺いでしまっているのです。彼らのような存在は、欧米発祥のマクロ経済学では想定されていません。「墓場に金は持っていけない、生きているうちに使って楽しもう」と考えるのが欧米人だからです。

実は大阪大学フェローの小野善康氏が、「死ぬまで金を使わずに貯め込む人」が存在することを踏まえて新たな理論を作ったのですが、輸入学問が絶対の日本の学界では異端扱いされています。彼の理論では「不況は、消費せず金を貯め込んでばかりの人間が現れることで起きる」ということが数理的に証明されていろ。まさに今の日本の状況です。

〈2010年、著書『デフレの正体』(角川書店)のヒットで一躍有名になったエコノミスト・藻谷浩介氏。今回、日本を分かつ「新・富裕層」と「新・貧困層」の格差、そして消費増税を控えた日本の行く末について提言を行なった〉

日本は消費増税に頼らず税収を増やさなければなりません。そもそも国の経済規模に対して、あまりにも税収が低すぎる。GDPが500兆円で政府の税収が40兆円というのは、実は極端に小さい政府なんです。平成24年度の国の歳出は94兆円。うち公共投資も、それぞれ5兆円程度。おまけに、人件費のおそらく半分以上が、災害対応で活躍する自衛官26万人の分です。決して公務員に同情するわけではありませんが、これを切り詰めたところで大した額にはならない。ちなみに、不正受給が問題になった生活保護費も、3兆円しかありません。

一方で国は、国債の金利だけで10兆円もの額を支払っています。税収わずか40兆円の国がですよ。これがなければ公共投資は3倍に増やせる。それなのに、国債金利のことは誰も叩かない。「国債は将来世代の負担だ」と全員が信じているからです。しかし実際は、今の納税者が年額10兆円を負担している。そしてその受益者は金持ちたちなんです。

土地や建物といった固定資産を持っていると、額面に対して必ず1.4%の税金が課せられます。しかし、国債などの金融資産には、額面ではなく金利に対する課税のみ。現在の日本国債の金利水準ではタダ同然です。だから、多くの金持ちは土地や建物を買わず、国債や海外に投資している。昨年日本が海外から稼いだ金利配当収入は14兆円以上にのほりますが、これだけ莫大な金融資産を持つ富裕層が、資産そのものについて税金を払っていないわけです。

日本は債務奴隷になった

消費増税には、やむを得ない面もあります。「増税するぞ」というポーズが必要なのです。日本政府は世界最大の借金王なのに、消費税率は低い。増税する気があると見せなければ、ギリシャと同列と判断されて日本売りを仕掛けられ、マネーゲームの食い物にされかねません。しかし、実際に消費税が上がれば賃金はもっと下がり、いわゆるデフレがさらに加速する。日本は国際金融市場向けのポーズを取るためだけに、多大な犠牲を払わざるを得ない。馬鹿みたいですが、ここまで莫大な借金をするとそういうことになるんです。日本人には、自分たちが巨額の借金をしているという自覚がない。古代ならもう債務奴隷にされている水準であり選択の自由はないのです。

こんな状態にしたのは、「景気対策のためにもっと国債を発行しろ」といい続けた、政・官・財・学界の有力者たちです。目先の電力危機回避のために原発再稼働を決めたのと全く同じで、国債の発行残高も、使用済み核燃料もどんどん溜まっていく。どちらも犯人は「目先の景気が最優先」と主張する先送り主義の人々です。

金を貯め込む人が増え、消費する人はどんどん減っている。65歳以上の人数だけが増えているという日本の人口構成が、この傾向を加速しています。金持ちだって、年を取れば食費は少なくなり、遠出する気力もなくなってくる。子育てどころか孫の世話も終わってしまう。日本人が親から最終的に財産を相続する平均年齢は67歳という調査があります。その歳になれば、相続しても使わずに貯めるだけですよね。使ったほうが得をする仕組みを作らなければなりません。

一方、若者は数が減っているうえ所得が低く、消費したくてもできない。モノ離れと言うけれど、所得が上がれば今よりは消費します。しかし今はすべてが逆、年間55兆円の年金が若い世代から高齢者に流れ、年間10兆円の国債金利が納税者から高齢富裕層に流れている。企業はさらなるコストダウンのため、若者の給料を削って物価を低く抑える。高齢富裕層はますます安く物を買うことができ、貯金が増えて喜ぶというわけです。

この構造を放置したまま、いくら日銀がお札をバラ撒いても、消費する層にお金は回りません。OECD(経済協力開発機構)は、日本に対して「消費意欲の高い女性の就労を進めて収入を増やせ」と提言している。事実を直視すれば、結論は明らかなのです。日本だけでなく東アジア全体で、若者の数は減り始めています。彼らに安い給料しか払わない企業こそ、市場縮小の主犯。若者の給料を増やす企業努力が、結局は自らを救うのです。


『週刊現代』9/8


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