加藤のメモ的日記
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| 2012年03月27日(火) |
タバコと肺ガンの関係(11) |
日本は喫煙率世界一・長寿も世界一 泉重千代さんも愛煙家だった
喫煙率は低下しているのに、肺ガンは増えている。日本は昭和40年前半、男子の喫煙率は80%を超えていたが、昭和60年には60%台に落ちている。女子も昭和41年には約20%弱だが、昭和60年には14%と減少の傾向を示している。肺ガンの男子の場合、昭和40年には10万人に対し、8.6人が肺ガンで死亡しているが、昭和58年には16.6人になっている。つまり、肺ガンで死亡する割合は2倍近く増えている。女子についても同様で、男子に及ばないにしろ、やはり相当増えているのである。ちなみに昭和25年では、男子喫煙率は80%だが、肺ガンの死亡率は1.9人でしかないのである。
もし、タバコと肺ガンに何らかの関係があるのなら、タバコを吸う人が減少すれば、肺ガンになる人も減少しなければならないはずだ。それがタバコを吸う人は減っているのに、肺ガンで死亡する人は、逆に増え続けているのである。喫煙率と死亡率を諸外国と比較すると、おもしろいことがわかる。日本の場合、人口10万人に対し、26.9人という割合だが、イギリスでは112人、西ドイツでは72人、アメリカでも67人と驚くほど高い率だ。ところが、胃ガンについてみると、日本では54人で、トップである。アメリカは8人という低率である。
つまりこのことから、ガンという病気には、民族的・地理的要因が強く関わっているのではないかと推測できる。肺ガンについても、タバコとの関係より、民族的・地理的要因の方が大きく関わっていると考えられるのである。民族的・地理的差というのは、食生活などの生活習慣や居住地の環境といったものである。また遺伝的なことも問題になってくるであろう。こうした数字を見るだけでも、タバコと肺ガンは、明らかに相関関係にいちするものではない。とにかく、肺ガンになるのはタバコだけが原因ではないのは確かである。他のいろいろな要因が複雑に絡み合って、肺ガンになるのではないだろうか。つまり、タバコをなくしても肺ガンはなくならないということは断言できる。
20年ぐらいまではフィルターがついていない両切りタバコが主流であった。しかし、今一番売れているのは「マイルドセブン」であるその他「キャビンマイルド」「キャスター」など、今や軽いタバコが主流である。それにもかかわらず肺ガン死亡率が増えているのはどういうわけだろう。つまり、タバコはけっして肺ガンの直接原因にはならない、という新説は、30年以上前のレポートによって、すでに口火を切られていたのである。肺ガンの複雑多岐にわたる因子が、生活環境だけでなく、、気候条件、チリ環境にも及んでいることを示している。例えば、重工業地帯の京浜、北九州地区と並んで、沖縄も非常に高い発生率を示しているのだが、その原因はいまだ不明である。
米国健康統計調査によると、各種疾病の罹患率に対する喫煙の影響を調べると、慢性気管支炎、肺炎、消化器系潰瘍を除き、喫煙者は非喫煙者より疾病罹患率が少ない。喫煙が内臓諸器官のすべてに悪影響を与えて所病を引き起こす、というのは迷信にすぎないという結果になる。むしろ、肝臓、腎臓、膵臓系の病気の発生率は、タバコを吸わない人の方が高いと言外に述べているのは注目に値しよう。ともあれ、タバコが人体にどんな害悪をもたらすかという調査には、いまだにはっきりした結論が出されていない。
にもかかわらず、ここ数年の世界の趨勢として「タバコは有害」と声高に主張されるようになった。衣食足りた先進国の人々にとって、次に起こるのは健康への関心である。少しでも健康を損ねる可能性のあるものは、生活から排除しようという姿勢が、タバコにも波及しているわけである。しかし、喫煙に関する病理学的な結論が出ないまま、いたずらに「タバコは有害だ」と決めつけるのは、まさに愚挙ではなかろうか。
そもそもタバコの害が叫ばれ始めたのは、今から50年ほど前、イギリスの疫学調査グループの発表した論説がその発端となっている。その要旨というのは、「タバコに含まれるタール分が肺ガンの原因で、ニコチンも心臓病の原因となる」というものであった。これがきっかけとなって、いろいろな研究者や研究機関がタバコに関する調査を始め、タバコはがぜん健康との関連でクローズアップされるようになったのである。それからすでに50年、半世紀たった現在まで、多くの研究者が、タバコの有害性を証明するために、多大な努力を払ってきた。また、それにかかった費用にしても膨大な金額になるはずだ。しかし、その結果いったい何がわかったのか。一口に言えば、今も昔もさして変わりはないのである。
逆に、今までタバコをやめろと言っていた医師たちの中には、「無理して止めるよりは……」というニュアンスに変わってきた人も少なくない。それどころか、ストレスの多い医師に、ヘビースモーカーが極めて多いという現実もある。おまけに疫学のデータだけで原因を決めつけようという姿勢にも疑問を持つ人が増え、警鐘さえ聞こえてくるようになった。ほんの一部の人々とはいえ、これは特筆すべき出来事なのである。
「タバコで真っ黒になった肺の写真」はでっち上げ
個人差があるのだが、吸いこまれたタバコの煙は外へ吐き出される。体内に取り入れられるのは、口中や気管などの粘膜に付着した分と、肺内に吸入されて残った分である。口中や気管などに付いた付いた分は、気管などの粘膜細胞や繊毛運動の働きによって、大部分はタンとして体外に排出され、肺内に吸入された分は、血液に取り込まれ体内をかけ廻り、最終的には尿となって体外へ排出されていく。つまり、ヤニ取りホルダーとは違って、あのドロドロしたタールは、身体には残らないわけだ。肺があのヤニ取りホルダーと同じ役割をしているとしたら、多くの愛煙家は今頃肺からあふれ出したドロドロで、口の中まで一杯になっていることだろう。
人間の肺が黒くなる理由の一つは年齢である。人間の肺は一般に歳を取れば自然と黒くなっていくことが確かめられている。20歳の若者の肺はピンク色で、80歳の老人の肺は黒いのだ。年をとれば人間の肺は自然と黒くなっていくのである。それともう一つの原因は大気汚染である。昭和40年から42年にかけて、広島大学教授、山田明博士のグループは、『広島地区における大気汚染の生体に及ぼす影響についての病理学的研究』という調査結果を発表し、注目を集めた。
広島市内の住民の肺の組織断片による”人肺の黒色粉塵の沈着度”を調べ、その結果、加齢とともに人肺の黒色変化が上昇曲線を描くことを突き止めた。次に研究グループは、日本屈指の工業地帯、北九州市と。大阪市の住民の調査結果と広島市内の調査結果と比較してみた。すると、どの年齢層においても、広島に比べ、北九州市や大阪の方が粉塵沈着度がはるかに高いことが判明した。すなわち大気汚染が進んでいる方が、肺の黒く汚れている度合いが大きいことを立証したわけである。
さらに犬を使って同様の調査を試みている。この調査は広島市の中都市である広島市と、広島県下の人口3万人余りの地方小都市・竹原市と比較し、全国で最も大気汚染が激しいとされている川崎市の結果とも比較した。この調査によれば、川崎市の犬の肺は、竹原市のそれと比べ約5倍、広島市のそれと比べても約3倍という高さを実証した。この結果、肺の汚染が大気汚染に比例して高くなるという事実を証明している。加えていぬによる調査も実施したことから、人間以外の動物においても、住んでいる地域の大気汚染によって、肺が黒く汚れることを立証したわけだ。
もちろん犬はタバコは吸わない。だから、肺が黒くなるのはタバコが原因ではなく、加齢や大気汚染がもたらす結果であるといえるのである。
肺ガン死亡率を諸外国と比べると意外なことがわかる。日本人男性の喫煙率は60%台で、肺ガン死亡率は人口10万人について27人という割合になっている。西ドイツでは男性の喫煙率は30%台で、日本の約半分である。にもかかわらず、西ドイツでは肺ガン死亡率は人口10万人について72人にも達している。他の先進国にも同様の傾向がみられ、喫煙率は日本より低いのに、肺ガン死亡率ははるかに高いといく結果がでている。つまり、喫煙率が高ければ肺ガン死亡率も高くなる、と単純には結論できないわけだ。
ガンは、いろいろな要因が絡み合って起きる病気である。大気汚染、ストレス、生活習慣、遺伝、体質、発ガン物質などがあげられるが、その容疑者としてタバコも仲間に入っていることは否定でき名だろう。しかし一部の人たちが声高に叫ぶ歩と、タバコと肺ガンの関係は強くないといえるだろう。そうかといって、まったく無実とも断言できないようである。いくらかの影響はあるらしいが、そうビクビクするほどのことでもない、というのが本当のところである。
『タバコと上手につきあう法』
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