加藤のメモ的日記
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| 2012年03月17日(土) |
一日一食で若返る(2) |
腹ペコ生活を始めたところ、体重は62キロをキープし、56歳とは思えない若々しさを保っている。人間ドッグで血管年齢は26歳、骨年齢は28歳と判定されたという。南雲氏も、空腹の効果について、第一に「サーチュイン遺伝子」の活性化を挙げる。加えて成長ホルモンにも注目すべきだという。更年期医学を専門とする金沢大学の小池教授が解説する。「成長ホルモンは、若返りホルモンといわれ、年をとると減っていくものですが、飢餓の状態になると成長ホルモンの分泌が増え、身体全体にいい影響を与えることがわかっています。飢餓が行き過ぎると逆効果になるので注意が必要ですが、適度な摂取カロリーの制限がアンチェイジングにつながるというのは、すでに研究者の間で共通認識になっています」
空腹になってお腹がグーッと鳴ると、その瞬間、消化器官からグレリンというペプチドホルモンが分泌され、それが下垂体を刺激して成長ホルモンの分泌を強力に刺激する。成長ホルモンは細胞分裂を活発化させて骨や筋肉の成長を促すだけでなく、体脂肪の燃焼を促進するのである。つまり空腹を保って内臓脂肪を減らすようにすれば、血管も若返るのである。さらに空腹状態になると血糖値が下がるので、糖分を脂肪に置き換えるインスリンの分泌を減らすことができ、すい臓の疲労を防ぐこともできる。
そもそも老化やがんの原因物質とされる活性酸素は、食べ物からつくられる。つまり、ものを食べれば食べるほど活性酸素を多く取り込むことになる。「食べ物を食べ、消化吸収する活動が体内で起こると”フリーラジカル#という身体を壊し老化させる物質がたくさんできます。代表が活性酸素です。エネルギーを摂らないと人間は生きていけませんが、摂る過程で自らを老化させる物質を作っていくのです。過食だとその分、体をこわす物質がたくさん出ることになり、老化を早める原因になるのです」
なぜ空腹が老化を防ぐのか、それには人類の数十万年の歴をさかのぼる必要がある。人間がいつもお腹いっぱい食べられるようになったのは、それこそ、この50年ぐらいの先進国だけの話で、人類の歴史は飢餓の歴史といっても過言ではない。人類はわずかでも食料を口にしたら効果的に脂肪に変える。「倹約遺伝子」によって。食糧を得られない期間が長引いた場合は、蓄えた脂肪をエネルギーとして、細胞の破壊を防ぐために修復機能を発動させるという学説がある。日本人は欧米人に比べ倹約遺伝子が発達しており、それが糖尿病増加の一因ともされている。日本人の倹約好き、貯蓄好きはどうも遺伝子レベルで決まっているらしい。
冗談はともかく、これらの遺伝子の働きについてはまだ明らかになっていない部分も多く、空腹と寿命の関係については今後、さらなる研究が必要である。だが、仏教の「断食」やイスラム教の「ラマダン」あるいは日本の「腹8分目」という言葉は、先人の生活の知恵の中から生まれた。先人たちは空腹の意義に気づいていたのかもしれない。
『週刊ポスト』3.16
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