加藤のメモ的日記
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2012年03月07日(水) 食うために殺す

イタリア人作家マーリオ・リゴーニ・ステルンの『猟の前夜』の一文について、服部氏は〈「獲物の命を奪う経験は、奪った側が死ぬ番になった時に、そのものの命を救う」〉〈私はそう理解している〉と書く。〈食うために殺す。これは生存の根本である〉〈「いつか罰が当たる」と恐れる心を持つことが贖罪なのだと思っていた〉〈だが同時に「罰」とは真逆ともいえるリゴーニ・ステルンの哲学も私の一部になっている〉

「罰なんて、考えてみれば何様だよって話ですよね。生物が生物を糧に生きるのは至極当然なこと。なのに〈命のために命を奪う矛盾〉が頭を離れなくて。今でも撃つたびに混乱する。そんな時、単に今は獲物の死ぬ番で、いずれ自分の番が来ても粛々と受け入れればいいとステルンには教えられました。自分が人間として自然界に存在していることを諦めるというかな、せめて相手に恥じない方法で狩るしかないと思うんですね。実は優れた猟師ほど”正当に命を軽んじる”というか、人と獣の命を同等程度に捉える。



『週刊ポスト』


加藤  |MAIL