加藤のメモ的日記
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戦後わが国にも、「貧乏人は麦を喰え」と言った池田勇人首相や、推挙されて「私は首相の任ではない」と固辞してしまった伊東正義元外相のような人がいる。池田首相の発言は、暗殺に結び付く可能性がある。事実後年左翼に襲われた。伊東さんの辞退はなかなか政治家にはできないことだ。政治家の9割以上は断らないものだ。池田さんは後に「私はウソは申しません」という流行語を生んだが、官僚出身とは思えない、歯に衣着せぬ人であった。
今や政治家のレベルは恐ろしく下落し「口腹別男」と呼びたい人が多い。野田元首相の言葉はとくに信用できない。「社会保障と税の一体改革」って何だ。典型的な「だまし」「すりかえ」のスローガンである。なぜなら、本当に一体改革なら、まず社会保障にいくらかかるかを明言すべきだろう。「これだけかかるから、消費税率を何%挙げる」というのが筋ではないか。何も言っていない。ただ「不退転の覚悟」とか「ネバーギブアップ」とか、耳触りにい言葉だけを吐いている。
惨めだったのは、1月16日の民主党大会で野党に「法案を潰したらどうなるか、考えていただく」と凄んだことだ。これは解散をちらつかせて野党を脅したつもりだろうが、そんな状況にない。早速翌17日に「それなら、堂々と解散をおやりになったらよい」と切り返されてしまった。今解散して一番議席を減らすのは民主党なのだ。半減すのではないか。
何故かというと、国民の多くは長年の自民党支配に嫌気がさし、前回の衆院選で政権交代を実現させた。民主党に入れた多くの人たちは、いわゆる働く人だったはずである。働く人たちは民主党に裏切られたと感じている。社会保障にいくらかかるかも言わず、単に「税との一体改革」の美名のもとに、なぜ消費税率を上げるのか。この増税でもっとも影響を受けるのは、働く人たちである。累進性がなく、すべての人にかかる消費税は、低収入の人たちほど重くのしかかる。他の方法、例えば、所得税のような選択肢はなかったのか。
‘70〜80年代はボクは地方税を含めると最高約80%の所得税を払っていた。それが徐々に下がって、今や50%くらいになっている。消費税だけでは片手落ちだ。所得税や法人税も並行して上げるべきではないのか。とにかく言動が軽くて哲学がない。選挙定数の減案にしても、比例区の80減だと、少数政党が大打撃を受けるのは目に見えている。
もっと根本的な改革、例えば現行の小選挙区制は、日本の風土に合わないのだから、思い切って中選挙区制に戻し、その際「県」という単位を無視し、諸外国のように人口で選挙区を決められるようにする。そうすれば「一票の格差」問題も解決してしまう。こういうことこそ、将来を見据えた根本的な改革なのである。
小選挙区制になってから、ロクな首相が出ていない。鳩山前首相が、「海兵隊基地は最低でも県外」と発言し、ちゃぶ台をひっくり返してしまい今に至っている。また菅前首相は首相になってしばらくして、「自衛隊の最高責任者は首相であることが、勉強してわかりました」と発言し、日本中をアッと言わせた。
日本は戦後奇跡的な高度経済成長を果たしながら、累進性の強い税法で、世界でも稀な「一億総中流化」という格差のない社会をつくりあげた。バブル期になると、自民党と財界が累進性を緩め、徐々に格差社会に向かった。小泉政権に至って、ついにアメリカ型の「金持ちはより金持ちに、貧乏人はより貧乏に」という色が濃厚になった。民主党の登場は、この傾向に歯止めをかける時期からだったと思う。大勝利した時のマニュフェストには、こうした色が濃く出ている。それを裏切った民主党に次の選挙で待っているものは”惨敗”しかあり得ない。ところが自民党も消費税を10%にという政策だ。働く人たちは一体どの政党に投票したら良いのか。
『週刊現代』
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