加藤のメモ的日記
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2012年01月25日(水) 日本の格差社会

『日本経済の奇妙な常識』(吉本佳生著、講談社刊)という本によると、ターニングポイントは1998年だったと断じている。一般家庭が貯蓄するように企業も貯蓄する。しかし、企業はそれを上回る設備投資をするるので、家計の貯蓄を銀行なとを通じて借りて使う。これが正常な姿である。ところが‘90年代の中ごろから、企業の貯蓄が増加の一途をたどる。それまで賃金アップや借り入れが設備投資とバランスがれていたものが、企業の内部保留ばかりが増えるというアンバランスな傾向になってきた。その頂点が1998年だというのだ。

著者は、この翌年に日本の自殺者が急増したというグラフを見せてくれた。それまで2万人台だったものが、この年一気に3万人を超え、それ以降ずっと3万人台になっている。その前年の‘97年4月、橋本龍太郎内閣は、それまで3%だった消費税を、5%に上げた。それから「小泉改革」なるものを経て、日本の「格差社会」はどんどん拡がっている。それはそうだろう。物価が上がらず、賃金も上がらずなら悪い意味でバランスはとれているが、恵まれた一部の人には、賃金上がったに等しい効果があるのだから。

そんな中で、野田首相は「不退転の決意」で消費税アップに全力を傾けている。そのために、あれほど抵抗を示していた、問責決議を受けた二人の大臣(一川防衛、山岡消費者各相)の更迭をするという。そこまでして野党の合意を取り付け、消費税を上げたいのは、一にも二にも財務省の意向に従いたいからである。消費税アップとなれば、直撃されるのは低所得者層と、中小企業である。それも吉本氏が一番やってはいけないという「小幅な増税」のくりかえしだという。

昔青島幸男は、佐藤栄作首相を「財界の男メカケ」と呼んで物議をかもしたが、野田首相も少なくとも「強い者の見方」のようだ。本来なら、内部保留という貯金を殖やしている大企業にこそ増税すべきなのに、消費税にしてもTPPにしても、しきりに”強い者”にすり寄っている。いつまでも彼を放置してよいのか。



『週刊現代』


加藤  |MAIL