加藤のメモ的日記
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2012年01月12日(木) 地震保険は無駄金か

震災で自宅の壁に数ヵ所ヒビが入り、兵が倒壊した茨城県の50代の男性が嘆く。「立て直そうと考え、地震保険の保険料をアテにして査定を受けました。が、査定は『一部損』で支払われたのは10数万円。これじゃ塀も直せない。地震保険は、「地震」「津波」「噴火」を原因とする火災・損壊・埋没・流出の損害を補償するものだ」。

地震保険に精通する不動産コンサルティングの三上氏が解説する。「火災保険では、地震が原因の火災被害や家財の損壊は保障されません。地震保険はそれを補完するため、火災保険に付帯する方式でつくられたので、必ず主契約となる建物や家財の火災保険とセットで契約することになります」地震保険の対象は、住居用の建物と家財(店舗、事務所は対象外)。支払額は、火災保険で支払われる額の30〜50%の範囲とされ、限度額は「建物5000万円」「家財1000万円だ」。

つまり、地震保険がカバーできるのは、最大で家屋の価値の50%。地震保険だけで家は再建できない。「地震保険という名称から”地震で壊れた家屋や家財を元通りにしてくれる”と思われがちですが、これは勘違い。『地震保険に関する法律』にあるように、あくまで〈地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的とする〉ものです」(三上氏)

保険料は、木造か非木造かの「建物の構造」、予測に基づく地震発生のリスクで区分けされた「住居の所在都道府県」により算出される。またどの損保会社に加入しても補償内容や保険料はほとんど変わらない。大規模な地震が起きたときに、損保会社が保険金を支払えない事態が起こらないように、「地震保険に関する法律」によって政府が保険内容を詳細に規定しているからだ。

気になるのは、補償の範囲と被害の算定方法だろう。地震被害を受けると、保険会社から派遣された査定人が被害状況の査定を行なうが、損害の認定基準は『全損』『半損』『一部損』の3段階しかない。その”境界線”は、政府が規定した「地震保険損害認定基準」で定められているが、「最終的には査定人の主観で判断される」(大手保険会社関係者)という。また地震保険の損害認定は、被災後に各自治体が出す「震災証明」屋「被災度区分判定」とは基準が異なる点にも注意が必要だ。「震災証明では半壊と認定されたのに、地震保険では一部損だった」というケースも珍しくない。

建物損壊の査定について三上氏が解説する。「査定で大きな比重を占める基礎部分を中心に見るとわかりやすい。乱暴にいえば、一部損とは、基礎部分に少しひび割れが生じ、屋根瓦が多少落ちた程度の損害で、住み続けるには支障のないケース。半壊は、基礎部分のヒビの本数が多く、屋根瓦の大漁落下、外壁にも損傷が見られるなど、大掛かりな修理をしないと居住できない状態。全損はそもそも修理が不可能で、立て直しが必要なケースです」支払われる保険料は全損で契約金額の100%、半壊で50%、一部損で5%と差が大きい。

「被害は半壊程度だが、多大な修理費用がかかるので、いっそ全損にしてしまったほうが得だと、自ら自宅に火をつけた例もあると聞く。ただ、査定人の目も節穴ではないので、不自然な燃え方をしていたら簡単にバレます。その場合、保険金が1円も下りなくなるだけでなく、刑事罰の対象となる。しかし全損と半損、半損と一部損の不公平感を取り除くのは保険会社の課題です。

東日本大震災で最も多かったトラブルが、車に関する事例だ。自動車は家財とみなされず、車両保険も地震による損害は保証してくれない。「地震保険に入っていれば、地震による損害でも保障されると思っていた人は多かったのですが、地震特約を付けていなければ保険金は支払われません。しかも特約の上限が低く最大50万円程度である。フルカバーは難しい。

●居住都道府県によって地震保険料は変わる
                    非木造    木造
福岡 佐賀 長崎 熊本 鹿児島   500円    1.000円

東京 神奈川 静岡県        1.690円   3.130円  


『週刊現代』 


加藤  |MAIL