加藤のメモ的日記
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| 2011年11月07日(月) |
帝国主義化する世界と「TPP」 |
野田首相は、TPP(環太平洋経済連帯協定)交渉への参加に前向きの姿勢を示している。これに対して、農業団体や保守派の一部が激しく反発している。賛成派、反対派ともに「TPPは自由貿易である」という大前提で議論しているが、筆者はこの大前提が間違っていると考える。自由貿易とは普遍的な概念だ。本気で自由貿易を推進するならばWTO(世界貿易機関)システムを強化すればよい。アジア太平洋地域という地理的限定で貿易システムを作るという発想は、保護主義に基づく関税同盟に他ならない。
歴史は振り子のような運動をくり返す。グローバリゼーションの時代は、過去の出来事となった。現在は国家と資本が一体となり、国外に進出し経済ブロックを形成する敵国主義的傾向が強まっている。ギリシャの国家債務危機でEUは危機的状況に陥っている。しかし、EUはギリシャを追放するのではなく、ユーロの為替ダンピングを行なってEUを生き残らせようとしている。
日本では円高が連日ニュースになっているが。3月11日の東日本大震災による大量破壊と、福島第一原発事故の後遺症で経済が弱っている日本の通貨が高値になるということ自体が奇妙な現象だ。こういうときは問題を分析する切り口を変えると事柄の本質がよく見える。米国がドルの為替ダンピングを行なっているのを見ればよい。米国が帝国主義的な近隣窮乏化政策を行なうためには、ドル安が不可欠なのである。
このような国際情勢の変化をよくわかっているのが、ロシアのプーチン首相だ。10月4日に彼は「ユーラシア同盟」の創設を提唱した。これはかって日本が考えた「大東亜共栄圏」に似た経済ブロックだ。野田首相によるTPP交渉への参加表明が、ユーラシア同盟をロシアが提唱するきっかけになったと筆者は見ている。世界の帝国主義的再編の中で、日本には二つのシナリオがあった。第一は、急激に台頭する新興帝国主義国・中国と提携し。東アジア共同体という経済ブロックを形成するというシナリオだ。しかし、中国が航空母艦を建造し、海洋覇権の確立を露骨に追及するようになり、この選択肢はなくなった。
そこで残るのが、TPPに参加し、日米を中心にオーストラリアを加え、アジア太平洋地域に経済ブロックを形成するという第二の発想である。ここで重要なのはTPPから中国を排除するということだ。日本、米豪は軍事同盟を結んでいる。ここで、日本が武器輸出三原則を緩和すれば、日本のみならず日豪の軍事協力も進み、中国に対するけん制になる。日本がTPPに参加することにより、日米同盟が新化するのだ。
農業の分野で米国からの圧力を過度に恐れる必要はない。米国も綿花やサトウキビなどに対しては露骨な保護主義政策をとっている。野田政権が胆力を出して、米国と帝国主義的な取引外交をすれば、そこそこの落としどころをつけることができる。プーチン首相は、TPPによって強化された日米同盟とロシアが共存共栄することを意図して、このタイミングでユーラシア同盟を提唱したのであろう。
『週刊現代』
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