加藤のメモ的日記
DiaryINDEXpastwill


2011年10月02日(日) 年金支給「68歳から」に備えよ

決定ではないがその方向

‘00年の年金法改正当時の最高責任者だった、元厚生省年金局長の矢野氏が語る。「年金の支給が67歳とか68歳に引き上げられる可能性はあります。すでに厚労省の年金部会では引き上げが検討課題とされている。加えて、これまでの年金改革では、30年かけて段階的に60歳から65歳に引き上げることを決めたわけですが、現在では30年というのはいくらなんでも時間のかけ過ぎで、15年とか20年の最も短いスケジュールで開始年齢を引き上げるべきだ、という議論があります。

しかし何より、年金財源が不足している最も大きな理由は、国民の平均寿命が延びたこと、そして少子化に伴う労働人口の現象である。「年金支給年齢が55歳から60歳に引き上げられたのは1954年ですが、当時の男性の平均寿命は63歳。年金の支給期間は平均してわずか3年だったというわけです。ところが、平均寿命が80歳の現在では、65歳から年金を支給されたとしても15年間も年金をもらえる。しかも、人口分布でいえば、払う人よりもらう人ばかり増えている。支給年齢の引き上げは当然なのです。

今年7月、民主党が『社会保障・税一体改革成案』を閣議報告しました。その中の1項目目に年金の『支給開始年齢引き上げ』が盛り込まれています。厚労省では開始年齢を1歳引き上げるごとに0.5兆円の予算縮小になるとみており、3歳引き上げると1.5兆円が削減できるというわけです」(日本年金機構関係者)

実際に、『社会保障・税一体改革成案』を読むと、「高齢者雇用の確保を図りつつ、68歳から70歳へのさらなる引き上げを視野に検討」、「厚生年金の支給開始年齢引き上げスケジュールの前倒しを検討」との文言が明記されている。ちなみに、諸外国では、すでに67〜68歳に支給開始年齢が引き上げられているのが現実だ。

「ドイツでは今年、支給開始年齢を現行の65歳から67歳に引き上げることが決められました。オーストラリアとアメリカでも67歳に引き上げられるし、イギリスは68歳への引き上げを決めた。日本は国際的にみれば、支給開始年齢が早いのです。中には70歳にせよという政治家もいますが、私は疲れ切って仕事ができなくなる67歳が限度だと思います年齢制度を破綻させないために、67歳を支給開始とする法律を早急に作り、国民の理解を得ることが大事です」(社会保険労務士の田中昭二氏)

他方、支給額については、現役世代の負担を抑えるため、年金の実質給付額を毎年、約1%ずつ下げることがすでに決定しており、‘30年頃には、現在の支給額より20〜30%ほど大幅減額されるという見通しもある。様々な理由により。公的年金の支給支給開始年齢の引き上げと支給額の減額は、将来的には避けられそうにない。仮に68歳からしか年金が支給されないとしたら、60歳で迎える定年から数えて実に8年間も、無収入・無年金生活を送らなければならなくなる。では、その間は一体いくら必要なのか。

フィデリア退職・投資教育研究所の野尻氏はこう試算する。「皆さんは、退職後の生活費は、現役世代の50%以下になると思っているようですが、退職前と退職後の生活実態を調査した氏比較したところ、定年後の生活費は定年前の68%とという数字が出ました。つまり、生活レベルはなかなか落とせないし、高齢者になれば医療費や介護費がかかってくるということなのです。
総務省の家計調査によると、無職の60〜69歳の平均支出額は夫婦合わせてひと月に33万3000円でした」

この調査に基づいて計算してみると、60歳過ぎて無収入・無年金になる5年間には、総額約2000万円、68歳までの8年間になると、約3200万円もの資金が必要になってくる。



『週刊現代』


加藤  |MAIL