加藤のメモ的日記
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2011年09月29日(木) 小沢一郎の落日

悲哀! 角栄の晩年にそっくり

勝てないから見切られて、人が離れていく。焦っても、かってほどのカネがない。そして「どじょう」に寝返るユダが止めを刺す。

かって田中角栄は、「頂上を極めるためには敵を減らすことだ」と語った。だが弟子は、その言葉を実践することができなかった。政界一の憎まれ役になった末、政治家・小沢一郎の黄昏が迫っている。

腹心たちが見放した

「小沢はもう終わりだな」「決まっているじゃないですか。終わりですよ」野田佳彦内閣が発足した直後のことである。今回の組閣で政務三役に抜擢された議員2人が密かにそんな会話を交わしていた。

角栄がロッキード事件の裁判の過程で力を失っていったように、小沢もまた「政治とカネ」の裁判を抱え、昨年6月に幹事長を失職する。以来、自ら代表選に出馬するなど、幾度となく復権を図ってきたが、今回の代表選では野田に敗北。9月26日には、元秘書3人の政治資金規正法違反事件の判決が控えている。小沢の政治生命は、いよいよ「落日」を迎えようとしているのだ。

代表選で事実上の3連敗を喫した直後、小沢は自身の傘下にある3つのグループの統合を発表した。約120名を一つに統合し、来年9月に予定される次回代表選に備えるため、と見られている。ところが驚くべきことに、「絶対服従」のはずの配下の議員たちが、小沢の号令に従わなかった。それどころかグループ内から統合案へのい議論が輩出し、計画がとん挫したのである。

小沢グループの議員たちからは、こんな反対意見が次々と飛び出した。「お小沢さんが有無を言わさず一人で統合を決めてしまった。代表選の敗因の分析もしないうちに、統合という結論ありきはおかしい」(小沢グループの中堅議員)

「代表選の連敗により、党内で反小沢票のほうが過半数を占めていることがはっきりした。小沢グループの数は減る一方だ。まずは仲間を増やすべきなのに、グループ統合論になるのは解せない。統合なんてすれば締め付けを嫌がって仲間がさらに減るだけ」「いくらタマガないからといっても、西岡武夫参院議長や輿石東参院議員会長なんていう、突拍子もない名前が飛び出した時点で、政治的に終わっている。小沢さんは、カンがすっかり鈍ってしまったのではないか」(同ベテラン議員)

小沢グループは、かっての「田中軍団」を彷彿とさせる鉄の結束力を誇ると言われてきた。しかし、領袖の角栄本人を含め、そのあとに何人もの総理大臣を輩出し、七奉行と称された幹部など人材の宝庫だった旧田中派に対し、小沢グループはまだ総理大臣の椅子を手にしたこともなければ、お世辞にも人材が豊富とは言えない。政治評論家の小林吉弥氏はこう評する。

「田中元首相と小沢氏の人間性の違いが、集団の特性にも影響しているのでしょう。田中氏のもとには、彼の人間的な魅力や畏怖や尊敬の念を持った有能な人間が集まり、それが政治を動かす力に繋がっていた。一方で小沢氏の場合、田中氏が持っていたような懐の深さ、心の広さを感じることが少ない。小沢氏の周囲には『選挙でバックアップしてもらえるかどうか』など、損か得かの利害関係に基づいた人間関係しかありません。そこが田中氏と最も異なる点であり、小沢氏が決して田中角栄にはなれない所以なのです」

その権力の源泉がカネであるのは共通しているが、角栄の人間力で結びついていた面もある田中軍団に対し、滅多に人前に姿を現さず、引きこもりがちで人見知りな小沢の率いる軍団には、そうした「陽」の雰囲気がほとんどない。それでも、どうして表面上の結束を保っているかといえば、カネをバラまき、一部の側近が『恐怖政治』を布いて、新人、若手の不満を抑えつけいるのが実態だ。

同グループの若手の中には、代表選前に先輩議員から「てめえ」呼ばわりで怒鳴られ、「従え」と恫喝され、渋々、方針に従ったというものが少なからずいる。そんな空気に辟易していた新人らが「グループを統合し結束をより強化する」などと言われたら、「これ以上はもうごめんだ」と考えるのは当然だろう。


『週刊現代』


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