加藤のメモ的日記
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| 2011年09月20日(火) |
原子炉建設費13兆円 |
ゼネコン大儲けの裏側―ゼネコン5社が独占
全国の原子力発電所の建設費用は約13兆円。原子炉建屋は大手ゼネコン5社が独占受注。祖利益率は3割にもなる。政界にも金が流れ、ツケは電気料金で国民に。原発マネーをめぐる癒着構造の一端が新資料と証言でわかった。
「ゼネコンの発注実績は、できるだけ隠したかった…」編集部が示したリストを前に、東京電力元幹部が語った。原発の建設費用は最終的に電気料金などとして国民が負担します。いわば”公共工事”と同じ。なのに電力会社は「民間企業だから」と発注金額や受注企業などをこれまで公表しなかった。
福島第一原発事故後、日本共産党の吉井衆議院議員の要求で、経済産業省資源エネルギー庁がようやくリストを提出した。ここには、全国の原発57基を受注した原子炉メーカー、原子炉建屋や土木工事を受注したゼネコン、建設費実績が記されていた。57基の総建設費実績は約13兆円。消費者物価指数による現在価値に換算すると14兆5千億円にものぼる。
原子炉メーカーは、一部外国企業をのぞき大手3社(三菱重工、東芝、日立製作所)が独占。原子炉建屋も、大手ゼネコン5社(鹿島建設、大林組、大成建設、竹中工務店、清水建設)が独占受注。多くは競争入札なしの特命受注である。受注した大手ゼネコン幹部は「祖利益率は20〜30%と公共工事以上に高い。1号機をとればその後も受注でき、廃炉までやると50年以上、仕事が切れない。本当においしい仕事だ」東電幹部も「ゼネコンには儲けさせてもらっている」とあっさり認めその理由を語る。
「原発立地の段階からお世話になる。用地買収から、政治家対策や説明会の”動員”など”裏”の仕事も頼む。電気料金に転嫁できるから、自分たちの懐は痛まないよ」
儲かる仕組み
「原発工事はトップセールスだ」こう言い切るのは大手ゼネコン幹部。原発工事受注活動の一端を明かす。「電力会社で新社長が就任した際には、お祝いを持って行く。数百万円だ」原発工事の多くは、電力会社が独自の判断で業者を指名する特命発注だ。その理由を東京電力元技術系幹部は説明する。
「原発は固有の技術が求められるというが、それは表向きの理由だ。実は、ゼネコンには原発立地の段階からさまざまな”裏”の仕事をやってもらっている。その一つが、電力会社などの依頼で、原発用地をひそかに買収することです。これまでも明らかになっているだけでも、東北電力が計画していた巻原発の建設予定地を鹿島の下請け会社などが買収した。また、関西電力などが計画していた玖珠原発の予定地を清水建設の関係会社などが買収した。
さらに、原発の新設や増設の際に開かれる公開ヒヤリングや説明会の際にもゼネコンは”裏”で暗躍していた。前出の東電元幹部は「国などの主催だが、実際は東電が準備する。警備上の理由で、会場の入り口を狭くしたりするが、これらの費用は国などからは出ない。地元対策も含めてゼネコンに汗をかいてもらっている」
原発予定地での”裏”での活躍の見返りが工事受注なのだ。その際、「裏の仕事でかかった経費は当然、建設費に上乗せしていた」と東電元幹部は語る。ゼネコンが儲かる仕組みはいろいろあるが、その一つは、原発工事では、正式着工の数か月前に特定ゼネコンに特命発注をして、施工計画などを手伝わせていた。そのためゼネコンは自分が儲かるように施工計画を作れた。それでも利益が足りない場合は、工事着工後、ゼネコン側が設計変更を出してくる。これも基本的には認めていた。
政治家も口きき
原発工事のうまみに食いついたのは、ゼネコンだけではない。東電元幹部は「政治家から特定業者を下請けで使ってほしいとよく言ってきた。国会議員から県議、町長までもが。立地や増設でお世話になるので、できるだけ使うようにしていた。政治家も電力会社に”口利き”をしていた事実を認める。自民党元閣僚経験者の秘書は証言する。
「公共工事に口利きをすると問題になるが、原発は民間工事なので口利きをしても問題になりにくい。電力会社は政治家の話はよく聞いてくれた」さらに、「原発のある地元有力者がかかわる建設会社には”お約束”として毎年、工事を発注していた」
”お約束”として工事を出していた1社が、福島第一原発の地元、福島県双葉町の田中建設。同社社長だった故・田中清太郎氏は1,963年から85年まで6期、双葉町長を務めていた。工事経歴書によると田中建設は2009年までの5年間で、福島第一原発や東電関連企業から、計約5億円の工事を受注している。さらに福島県議だった元浪江町長が株主の建設会社にも東電は、09年までの3年間で約2億1千万円の工事を出している。電力会社とゼネコン、政治家はまさに「原発利益共同体」。そこにメスを入れることが求められている。
『週刊朝日』
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