加藤のメモ的日記
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2011年07月30日(土) 中国高速鉄道列車事故

中国浙江省で23日に起きた高速鉄道の列車事故で、当局が犠牲者を過小評価している疑惑が浮上している。中国国営・新華社通信は26日未明、死者を40人から39人に訂正した。当初は43人との発表もあっただけに、さらに下方修正された形だ。その陰で、現場近くに掘った穴に埋めた車両には「遺体が多数残されていた」や「生存者まで生き埋めにされたのでは」などの声が広がっている。一方で中国当局は、先頭車両の掘り起こし作業も始めた。

少なすぎる死者に疑問の声
新華社は死者数について「40人目に数えられていたのは25日の交通事故の死者で、鉄道事故とは無関係だったことが地元当局の調べで判明した」と報じ、負傷者は約200人としている。ところが、中国鉄道省のあまりに乱暴な事故処理に対し「ありのままを発表するには犠牲者数が多すぎて、国家の威信に傷がつく。そこで遺体を列車ごと埋設することで、事実を隠蔽したのでは」と中国事情に詳しい専門家はみている。事故当時、追突側の列車だけでも約500人の乗客がいたことから、単純に負傷者の数を差し引いても、死者数が少なすぎるというのだ。

「生きたまま…」の噂も
現場では、事故翌日の24日朝に高架橋に残された追突側の車両を地面に落とし、先頭車両の最前部を油圧ショベルで破壊した。巨大な穴を掘り、木っ端みじんになった先頭車両を埋めた。

鉄道省側はこの措置について「現場が泥にまみれ、救出作業に支障をきたしたため車両を埋めた」と説明した。釈然としない話に中国のインターネット上には「追突した先頭車両は事故当時のデータが残っていたはず。当局による証拠隠滅に違いない」などとの意見とともに「復旧を急いで、救出作業は二の次なのは明らか」との書き込みも。

当局が発表した「事故後20時間ぶりに女児を救出」という発表にしても「事故車両を解体している時にたまたま見つかっただけ。”救出”なんてちゃんちゃらおかしい」などと批判的な見方が多い。動画サイト・ユーチューブには、事故処理の様子を撮影した多数の動画が投稿され、掲示板には「重機で転がした車両の窓から遺体のようなものが転がり落ちている」といった指摘もある。

事故で家族を失った遺族の中には「重機の作業により遺体の頭部がひどく負傷していた」と証言するものも出た。当局が復旧を急ぐあまり、人名や犠牲者への配慮をほとんどしなかったことへの怒りをあらわにした。一方中国当局は26日、先頭車両の残骸を掘り出し、地上に残っていた5両とともに搬出作業を行なった。先頭車両を埋めたことが「証拠隠滅」と批判されたのを受け、原因調査を慎重に進める方針に転じた可能性がある。専門家らも同日、現場を視察し、原因究明に向けた作業を本格化させた。

隠蔽の裏に鉄道利権―予算の3割が汚職の金
あまりにむちゃな証拠隠滅を図ったのは、国家的プロジェクトの鉄道事業継続しかない。あわよくば自国製の列車を輸出しようともくろんでいた中国にとって、今回の事故は大ダメージだが、鉄道事業はやめない。中国事情に詳しい評論家の石平氏は、中国政府の対応に「鉄道の技術や安全管理に問題があったことにせず、天災である落雷のせいにした。責任逃れして、事故を早く過去のものにしたいのです」と語った。その最大の理由は鉄道利権だ。

「利権を握るのは鉄道省です。政府から莫大な資金を得て、さらに建設者から賄賂を受け取るんです。一般的に公共事業の予算の3割が汚職の金に消えていく。利権を手放さないのが中国の常識です」(石平氏)

事業継続のために、証拠隠蔽。中国はこれも「常識」なのか。この鉄道を造った技術者は「絶対に乗りたくない」と話しているという。


『九州スポーツ』


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