加藤のメモ的日記
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2011年07月02日(土) 御用記事

官僚のリークによる御用記事を、いつまで書き続ける気か

今やだれもが気づきはじめていることだが、日本の新聞、テレビには監視すべき政府機関やその構成員である官僚に寄り添い、その意向につき従おうとする習性がある。この事実を、見事なまでに浮き彫りにしてくれたのが、原発災害に関する報道だった。なかでも象徴的だったのが、福島第一原発1号機の原子炉建屋が爆発した際の報道である。震災翌日の3月12日、NHKはじめ民放各局とも、爆発の瞬間はしばらく報じなかった。建屋の上部が吹き飛び、鉄骨があらわになった建物を静止画像で流していたにすぎない。

だがこの間、BBCはその爆発の瞬間をとらえた映像を放送し、ウェブでも即座に公開した。この不自然かつ不気味な情報格差は、ツィッターやメールで日本国内に瞬く間に広がった。そして多くの国民が、日本のメディアに対して抱いてきた不信を確信に変えたのである。

要するに日本の新聞、テレビは公権力がゴーサインを出すまで”国民の知る権利”に答えようとはしないのだ。というよりできないのである。彼らの取材拠点である記者クラブの運営費、年間111億円の大半は税金で面倒を見てもらっているからだ。批判すべき相手側から、これだけ手厚い経済的便宜供与を受けていれば、「完全な自由を有する」報道などできなくて当たり前だろう。それどころか、邪な官僚たちのお先棒をかつぐ報道に利用されたとしても、何も文句が言えないのが実態だ。

5月26日、毎日新聞が一面で報じたスクープも、厚労省年金局の”一部官僚”にうまくそそのかされ、書かされたものといっていい。記事は、民主党のマニュフェストの柱といもいうべき年金記録問題への取り組みの変更を伝えるものだった。同マニュフェストは、コンピューターの年金記録とそのもととなる紙台帳の記録、7億2000万件を全件照合することで、年金記録の漏れをなくそうとするものだ。まさに国家的大プロジェクトであり、民主党は、これによって政権交代を果たしたといってもいい。その重要政策の変更となれば、それこそ民主党内での議論が不可欠だ。

ところが不思議なことに、党内でそのような議論が活発に、かつ広範囲に戦わされた事実は存在しない。なのに厚労省がリークする形で「全件照合を断念する方向で検討に入った」との記事が出現したのである。いったいどういうことか。マニュフェストの変更を望む一部の官僚が、自らの願望を厚労省の意志のように吹聴し、新聞に書かせたというのが真相だ。事実、細川律夫厚労大臣は国会で記事内容を全否定しているうえ、政務三役の一人は、「毎日の記事は誤報である」として、毎日新聞に抗議するよう事務方に命じているのである。年金局の幹部の一人も、「発信源の官僚は局のラインじゃない人ですから、勝手なことを振れ回られ困っている」と苦り切っていたほどだ。

本来の報道の在り方とすれば、官僚の説明をうのみにするのではなく、まずは内容を検証し、事実に反する以上、その邪な発言こそ問題とすべきだろう。一部官僚の思惑だけで世論が恣意的に誘導される事態がまかり通れば、国会軽視が常態化し、それこそ議会制民主主義の否定になるからだ。

今回の情報の発信源となった年金局の官僚は、得意のべらんめえ調で「全件照合など、やるわけないだろう」と、各紙の記者にレクチャーしたという。この種の官僚のお先棒を担いできた記者は、「記事にしなければ、次のネタがもらえない」と、弁明する前に報道の在り方を真摯に問い直すべきである。



『週刊現代』


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