加藤のメモ的日記
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「呼んでもためにならないエッセイ」と副題のつく『周作塾』(講談社文庫)の一節は、総理大臣の器量について、「「狐狸」のような「知謀」の保守政治家、三木武吉(1884〜1956)を例に語っている。三木は選挙演説の最中に「5人の妾がいる」と指摘されて、「5人ではない7人です。老いてもみんなしっかり養っています」とやって喝さいを浴びた「怪物」だ。吉田茂を政権の座から引き下ろして鳩山一郎をすえるために、血の出るような努力をした。
それに成功したあと、ある人が「鳩山さんのあとは三木さんですね」といったら、三木はムッとして答えた。「総理というものは、偉い、偉くないは別として、将に将たる器でないといかん。吉田君、鳩山君、緒方竹虎君、一様に将たる器だ。わしは兵卒だ。なれるもんかい」吉田の政治は憎んだが、吉田の器、器量が自分より上だということをはっきり認めていた。器量とは、才能、努力だけでなく、持って生まれた風格とか雰囲気や人気のことである。自分の器量を認識することは難しい。
人はともすれば自己の人格、器量以上の野心を抱きがちだが、総理にしても社長にしても、実現は難しいと、「狐狸庵山人」は勤厳に述べるのだ。ところで、敬愛する「山人」に異を唱えるつもりはないが、ゾロゾロ続く総理大臣を送り迎えしていると、さあ、難しいかしら?という気がしてならない。
至近のそれでいえば、「投げ出し」で「落第」した安倍、福田、麻生、鳩山も、「超低空飛行」の菅直人首相も、みんな器量なんかとカンケイなくホイホイと総理の座についたみたい。大震災の被災者は、二重三重の「人災」の渦中にあるのだ。
遠藤周作
弁護士による被災者支援が本格化している。6月11日には「全国クレジット・サラ金問題対策協議会」と「銀行の貸し手責任を問う会」が銀行ローンの免除を求め緊急集会を開いた。津波で家を流されたうえ、住宅ローンの支払いが残っている人は少なくない。加えて農業施設や生産設備などを失い、債権のために借金をして二重ローンを余儀なくされた人もいる。
両団体とも生活者の側に立った戦いで知られ、「手強い相手」であるのは金融界全体が認める。また、原発事故の賠償請求が本格化するのはこれからだ。事故によって約9万人が避難生活を余儀なくされ、8万戸の農家が出荷制限を受け、避難地区内の工場は操業をストップしている。
賠償指針は原子力損害補償紛争審議会で作成しているが、出荷制限のすべての農産物の風評被害を認めるなど被害者の立場に立ち、東電の賠償総額は10兆円に達するとみられる。当然弁護士の出番。賠償交渉は個別対応、避難民も被害者もプロの手を借りなければならず、相談件数も膨大だ。弁護士界はこれを「ポスト過払い金返還」と期待するが、「ハイエナ弁護士」出現を警戒する向きもあり、その分野でも活躍したクレ・サラ対協の”捌き”(さばき)が期待されている。
『週刊現代』
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