加藤のメモ的日記
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もともと原子炉は潜水艦の動力として戦争のために急いで開発されたがゆえに、未完成な技術だ、ということです。このことが今日に至るまでの根本的な問題状況なんだということを教えられました。日本では原発の安全基準は大学の先生がアルバイトでしている。スリーマイル島原発事故の根源には「安全神話」があった。危険を知りながら地震地帯に浜岡原発を設置、原発の推進と規制の分離もできていない状況だった。
使用済み核燃料は、10万年も管理が必要だとも。今から10万年前というと、ネアンデルタール人の時代だそうです。今回の問題でメディアはどうだったのででしょうか。1945年8月15日の日本の敗戦がメディアの「第一の敗北」とすると、2011年3月11日は「第二の敗北」です。前者はいうまでもなく国策としての戦争を「日本の生命線」とメディアが煽ったこと。戦後、メディアは「2度と戦争加担しない」と再出発したはずです。
戦後は経済成長が国策になり、原子力発電はいわばその中枢的なテーマになりました。メディアもちょっと首をかしげながら応援し、今度は「経済が日本の生命線」だと煽った。とくに大手メディアは、原発に警告を発してきた学者を、ほとんど登場させなかった。国策をうのみにし、結局、今日の事態に至ったことを思うと、第二の敗北です。安全神話には合理性がないとまず気付くべきでした。今度は原発から撤退する方向で着実に推進していくしかない。原発事故で住んでいたところを去らねばならない人のことを思うと、いま隣に原発を立てることを認める人はいませんよ。脱原発を次なる国是にしていくような時代の転換期です。次の国政選挙は、原発を大きなテーマにしたらいいと思っています。
中曽根、田中体制が破綻
原発を推進した政治家は、自民党の中曽根さん。それを一種の地域開発に結び付けたのが田中角栄さん。乱暴に言えば「札束でほっぺたを引っ叩く」ことと、「安全神話」で住民を納得させてきた。今の事態は中曽根プラス田中の政治体制の巨大な破綻なんですね。東京電力というのは、日本資本主義のいわば正規の主流です。公共事業であり、すべての産業の基盤であり、かつ地域独占である。一種のエネルギーファシズムですよね。それが「財界」というものの中心にどかんと座っていた。自民党が一番堂々と後ろめたさなく付き合える相手が東電だった。東電の利益と自民党の利益は「日本経済の発展」という名目で、離れがたく結びついていた。原発事故がその結末だったのでしょう。
民主と自民がメルトダウン
私も、何度か被災地に行きました。炊き出ししたり、がれき処理に必要なスコップを持って行ったり。避難所では元看護師の女性が、男性陣を従えてプールからトイレに水を運ぶパイプを作っていました。みんな家族を失ったりすさまじい体験の中で生きている。それでも自分より人の命を気遣っています。被災地で一番しっかりしているのが普通の人。次に必死に頑張っているのが自治体の長。全く無能力をさらしたのが中央政治。菅内閣への不信任騒ぎで、無残に暴露されました。政治のメルトダウンでです。共産党は不信任決議案に棄権しました。あの騒ぎで、どっちかに加勢するというのは恥ずかしいことです。棄権して本当に良かったと思います。
今回は自民党と小沢一郎民主党元代表が、とりあえず「菅降ろし」で一致して手を組んだ。大義のない話は、やはり破綻するんです。本当に国民を第一に思いやる政治ではなかったとしか言いようがない。政治は被災地のために力を合わせてやってくれ、というのが被災者の願いでしょう。
『週刊朝日』
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