加藤のメモ的日記
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2011年04月17日(日) 義援金は渡るのか

今、日本中に募金を呼びかける声があふれている。東日本大震災の被災者に対する義援金は史上最高になると予測されている。しかし「いったいあの金はどこに行くのか。本当に被災者に届くのか」という疑問を感じている向きは多いのではないだろうか。もちろん多くは善意のものだが、中には悪事をはたらく者もいる。

警察庁に寄せられた義援金詐欺の相談件数は3月29日の時点で158件にも上った。「相談は1日10件のペースで増えていて、被害届もすでに10件受理しています。『震災で不足している注射針を送るために金やプラチナを集めている』と、老女を騙して指輪2個を詐取したケースなど、さまざまな詐欺が横行しています。

募金詐欺が横行するには、こんな事情があった。「実は募金には法的な規制がほとんどありません、どこからも許可を取る必要はないし、領収書も発行する必要もない。収支報告を公表している団体もありますが、ほとんどはしていない。ごまかそうと思えばいくらでもごまかせるのが実情です。証拠が残らない街頭募金はやりたい放題です。『NPO緊急支援グループ』を名乗る自称NPO団体では、アルバイト雑誌で集めたバイトを使って、‘4年の10月〜12月のたった3ヶ月で2500万円も集めました。だから募金詐欺はなくならないのです」

本誌も上野駅前で、ある団体を見つけた。中年の男女二人が「日本ボランティア会」を名乗る団体の募金だ。記者が使途を尋ねると「すでに被災地に100万円を届けました。明日は岩手県山田町に物資を届ける予定です。事前に役所と連絡を取っています」との返答だった。しかし岩手県と山田町の災害ボランティアセンターに確認したところ、そうした連絡は入っていないという。どういうことかと同会に問い合わせたところ、「担当者は明日から募金を渡しに被災地に入っています」と答えたが、その後、和田会長と名乗る人物が出てきて「山田町には東海のスタッフの実家があり、そこに物資を運びました。避難所に入っていません」などと二転三転、少なくとも山田町の被災者に募金が届いていないことは間違いない。

全額、被災者に届くのか?
歌手のGACKTが設立した団体の募金は、当初振込先に民間企業の口座を使ったことで疑惑をもたれた。「実はGACTOは、新潟県中越地震の時にもチャリティーを謳ったアクセサリーを販売して7000万円以上稼いだのに、寄付はたった200万円という”前歴がある”今回も約1億円の募金を集めたと聞いていますが、被災者のもとに全額届くのか不明です」(所属事務所関係者)この件に関して所属事務所から返答はない。

この他、県や市町村にこ直接振り込まれてくる義援金もある。震災地対応でほとんどの自治体では未集計だが、岩手県には10億7000万円(25日現在)、茨城県には3億8000万円、が寄せられている。義援金の行き先は大きく分けて三つある。1つは日赤などから被災者それぞれに現金で分配されるもの。2つ目は現地の復興支援活動団体へ寄付され、物資や活動経費として使われるもの。

3つ目は被災地の自治体に直接送って、被災地の復興に当てられるものだ。最も信頼性の高い募金団体として義援金の半分以上を集める日赤には、30日現在で約594億円がプールされており、今も1日10億円単位で増え続けている。募金のペースは阪神、淡路大震災の差の約24倍で、このままいけば単純計算で4000億円を突破する勢いだ。

義援金が届くのは当分先

しかし実はこの金が日赤から被災者のもとに届くのは当分先になるという。被災地が多数の県にまたがっているせいだ。義援金は、被災した都道府県が設置する「義援金分配委員会」が決定する被災状況に応じた配分基準に従って、被災者に届けられるのが通例だ。阪神・淡路大震災の時は、被災1週間後の1月25日に前身団体にあたる義援金募集委員会を兵庫県が設置した。しかし今回は被災地が複数県にわたり、被災状況もつかみきれないため、どこがいつどのように委員会を組織する目処も立たない状況だ。

「現在検討されているのは、配分委員会を、被災地全体、被災県、被災市町村の3段階で開いて義援金を配分する形です。これなら県や市町村に直接寄せられた分の義援金をその自治体で配分することができます」(茨城県保健福祉部)`04年に発生した新潟中越地震で義援金配分委員会長を務めた関西大学の河田教授が語る。「新潟県中越地震は10月23日に起きました。雪が降る前に配分したいと目標を立てました。義援金の配分というのは被災状況に応じて設定するので、被災者への罹災証明の発行が終わらないとできず、そのために時間がかかった。今回私が心配しているのは、福島原発の混乱のせいで罹災証明の発行が相当遅れるんじゃないか、ということです。本来罹災証明の発行は災害後一ヶ月で始まるものですが、今回は難しいかもしれない。第一次の配分は最速でも6月頃、現実的にはもっと後でしょう」

せっかくの義援金の配分が自治体の機能停止で遅れるのは何とも歯がゆい。これに対し、寄付金のほうはすでに自治体やNGOの物資の購入や輸送などのための資金として活用されている。義援金をとりまとめ被災地で活動するNGOに活動資金を割り振るNPO法人にジャパン、プラットホームがある。24日現在で18億円を集め、難民を助ける会、国境なき子供たち、などのNGOに助成している。普段の募金は使途となる災害地を特定していないが、今回は義援金の全額を東日本大震災に充てる。

自治体の募金については、「ふるさと納金」を利用する手もある。極端に言うと、自分の払う住民税を、被災地に寄付できる仕組みだ。寄付の領収書を持って確定申告すると、寄付金額から5000円を引いた分住民税が控除される。被災地が本当に必要としているタイミングで、必要な額の義援金を届けたいものだ。



『週刊現代』4/16


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