加藤のメモ的日記
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2001年の報告書では、温暖化を決定づける理論として「ホッケーの棒理論」が使われていた。「地球は産業革命以来、急に温暖化するようになった。だから犯人は人類だ」と、主張するこの理論は、二酸化炭素排出規制を求める先進国の政府と市民による運動の、最大の理論的拠りどころになってきた。
実は、ホッケーの棒理論は、世界の学者の間では非常に評判がわるく「都合のよい過去のデータだけを寄せ集めて、歴史的な世界の温度変化だと強弁している」と批判されていた。専門家の間では、未来の温度予測はおろか、過去の歴史的な温度変化についても、まだ議論百出の状態なのである。「もはや温度変化は疑いの余地がない」という結論は、政治的な意図にもとづいてIPPCの事務局が、他の学者たちの科学的誠実さを無にして暴走した結果のエセ科学である。
IPPCの報告書で問題にすべきもう一つの根本的なことは、コンピューターのシュミレーションプログラムを絶対視してしまっていることである。気候のメカニズムは非常に複雑で、人類がわかっていないことも多い。わかっていないことを適当にシュミレーションに置き換える際に、政治的な思惑が入ってくる可能性は充分ある。
IPPCの報告書では、温暖化の原因は、二酸化炭素などの温室効果ガス増加に集約されており、他の原因については少ししか議論されていない。だが、最近の研究では、実は二酸化炭素よりも太陽の黒点のほうが、温暖化に関係しているのではないかという説が有力にになっている。
これはデンマークの学者、ヘンリク・スベンスマルクらが10年以上前から研究しているものである。宇宙は、星の爆発などによってつくられる微粒子で満ちている。微粒子は地球にも常に降り注ぐ宇宙線として知られている。大気圏に降り注ぐ宇宙線の微粒子には、その回りにある水蒸気がくっ付いて水滴になり、雲をつくる。降りそそぐ宇宙線が多いほど雲は多くなる。
太陽は、黒点活動が活発になると、電磁波(太陽風)を多く出し、宇宙線を蹴散らすので、地球に降り注ぐ宇宙線が減る。すると、雲が少なくなり晴れの日が多くなり温暖化する。逆に太陽黒点が減ると、降り注ぐ宇宙線の量が増え、雲が増えて太陽光線がさえぎられ寒冷化する。世界史を見ると、太陽黒点がとくに少なかった1650年からの50年間に、地球は小さな氷河期になり、ロンドンやパリで厳しい寒さが記録されている。
IPPCでは「20世紀は、地球の工業化で増えた二酸化炭素によって温暖化した」という説が有力だが、スベンスマルクの説だと、20世紀は太陽黒点が多い時期で、宇宙線が少なく雲の発生が少なかったので、温暖化の傾向になったのだとされる。雲を研究している学者の多くは、宇宙線の多寡は雲のできかたに関係ないと主張しており、スベンスマルクの説は否定されていたが、スベンスマルクらは2005年の実験で、宇宙線が水蒸気をまきこんで水滴をつくることを証明した。
実験は成功したものの、おそらく温暖化の二酸化炭素説が政治的な絶対性を持っていたため、地球温暖化の定説をくつがえす内容を持っていたスベンスマルクらの実験結果の論文の掲載は、権威ある科学の専門雑誌からことごとく断られ、ようやく2006年末になって、イギリスの王立研究所の会報に掲載され、遅まきながら権威づけを得ることができた。だが、IPPCの報告書は、未だにこの新説を無視している。
『田中宇の国際ニュース解説』
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