加藤のメモ的日記
DiaryINDEXpastwill


2011年03月15日(火) 闇の物質 ダークマター (17)

宇宙には闇の存在、ダークサイドが確かに存在する。宇宙における闇の存在ははるかな昔からおそらく宇宙の開闠時からそこに在ったものだ。目の前にありながら、つい最近まで人類の誰ひとりとして気付かなかった暗黒の存在なのである。一つはダークマターという名前で引力というダークフォースを奮っている。

もう一つはダークエネルギーという名前で斥力というダークフォースを奮っている。そして真なる意味で、宇宙全体を支配し、その進化を左右してきた存在なのである。宇宙における暗黒勢力は、理由はわからないけれども決して光を出さないために、その姿をみることはできない。その点では、見えないことにかけてはブラックホールに引けを取らない。しかし宇宙の暗黒勢力も、次第にその姿を明らかにしてきつつあるのだ。

早すぎる銀河回転

いわゆる暗黒物質の存在について、多くの天文学者が真剣に悩みだしたのは1970年代に入ってからだ。一つは渦状銀河の安定性の問題だ。当時、円盤状の渦状銀河の振る舞いをシュミレートするために、円盤状に星を分散させて回転させてみると、あっという間に円盤状の形状が壊れて丸くなってしまうのである。

宇宙で壮麗な姿を見せている渦状銀河は、力学的な状況からは存在できないはずなのだ。円盤状に星を置いただけでは壊れてしまう渦状銀河なのだが、もし、正体はともかくとして、渦状銀河の周囲に星の10倍もの質量を置いてみると、円盤は安定に存在できるのである。これはどういうことだろう。

渦状銀河は回転しているので、いろいろな半径での星やガスの振る舞いを調べてみると、いろいろな半径での星やガスの回転の速度がわかる。回転の速度がわかれば、それだけの回転を起こすために必要な質量を見積もることができる。これが銀河の力学的質量だ。そしていくつの渦状銀河を調べたところ、回転速度の大きさから見積もった質量が、光で見えている質量の10倍もあることが珍しくないのだ。

すなわち、一つひとつの銀河には、目に見えないが重力に及ぼす物質、ダークマターが大量に含まれていたのである。

今日では、ダークマターは宇宙の全物質質量の90%以上を占めているのではないかと思われている。しかし見えないために、誰ひとり気付かなかったし、また証拠が出始めてからもその存在をなかなか受け入れられなかった。とにかく時がまだ満ちていなかったのは確かだが、彼の主張が正しいことがわかるまでには、まだ半世紀という年月が必要だった。


闇の勢力 ダークエネルギー

宇宙に存在するものは、目に見える物質あるいは目に見えない物質まで含めても、物質だけではない物質以外にも宇宙空間に存在して、宇宙の構造に多大な影響を与えているある種のエネルギーが存在すると考えられていて、今のところ直接的な検出ができていないため、ダークエネルギーと呼ばれている。ダークエネルギーは、ダークマターも含めた物質の数倍から10倍ぐらいあるかもしれない。

超新星宇宙論プロジェクトで判明した点は、ダークエネルギーの寄与が宇宙の全内容物の73%もあることだ。宇宙膨張を記述するアインシュタイン方程式でいえば、アインシュタインが一旦導入したあとに棄却した宇宙定数が復活することだった。そして宇宙定数があるということは、宇宙が加速しながら膨張しているということなのだ。

これは、物質や通常のエネルギーの重力作用による宇宙の減速膨張に対して、宇宙の加速膨張と呼ばれる。そして、そのような加速運動を引き起こすためには、宇宙に存在する物質自身によって宇宙を収縮させようという重力に対し、宇宙を膨張させようとする斥力が働いていることになるのである。その宇宙膨張を加速させる力のもとになっているエネルギーが、“ダークエネルギー”なのだ。

ダークエネルギーの正体はまだ不明である。一つの候補としては、真空エネルギーが考えられている、他の候補としては、クィントエッセンスと呼ばれるある種の弱い力の場だという人もいる。また他の次元からエネルギーが漏れているのかもしれない。すなわち、宇宙は高次元空間に浮かぶ膜だという説があり、ブレインワールドとかM理論と呼ばれている。そのような理論では、我々の宇宙である4次元時空の外部から重力やダークエネルギーなどの影響が入ってくる可能性があるのだ。

宇宙のダークサイドは、闇の底に深く沈んでいて、その全容が明らかになるにはまだまだ時間がかかりそうである。



『光と色の宇宙』


加藤  |MAIL