加藤のメモ的日記
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2011年02月19日(土) 遺伝の秘密

では、本人にも説明できないような「ひらめき」や「直感力」は遺伝するのだろうか。こうした要素が勝敗に大きく作用するのが囲碁や将棋の世界。日本棋院棋士会長の話は興味深い。「囲碁の場合、すでに4〜5歳でセンスのあるなしがはっきりわかります。その年頃の子どもは石で囲った地がどちらが多いかなどの計算はできません。

なのに、センスのある子はカンでどちらが勝っているかわかってしまう。そいう子供は、いいポイントにポンポン楽しげに打っていたかと思うと、要所要所では打つ手を止めて、じっと考え込むこともできる。どこが勝敗の大事なポイントなのか、本人が何かを察知するから考え込むわけです。これは教えたからできるというものではありません」

ポロの棋士になるには、本人の先天的な能力というもが大きいようだ。さらに小川氏は“棋風”について語った。「こういう能力を持った子供たちがプロを目指して、囲碁の先生の元に集まり、道場で内弟子生活を送りながら、切磋琢磨して囲碁を習っています。興味深いのは全員が同じ指導を受けているのに“棋風”はみんな違うことです。囲碁は環境によって後天的に打ち方が変わってくるというより、本人が持って生まれた素質や考え方のほうが碁盤に出やすい。

最近はプロ棋士同士で結婚される方も多く、生まれたお子さんがまたプロ棋士を目指すケースも増えてきました。棋士の世界では親が子供に直接、教えるということはあまりなく、他の先生に預けて鍛えてもらうというのが一般的ですが、親から習ってもいないのに、“棋風”は親子で似てくることが多いんです」顔や体格が似るという次元とは異なり、科学的に証明することは難しいだろうが、遺伝の不思議さを感じさせる話だ。

もう一人、言葉では表現しにくい独特の「感覚」と遺伝との関係を語る人物がいる。心臓外科医の世界で天才外科医と呼ばれている南淵明宏医師(52歳、大崎病院東京ハートセンター・センター長)である。外科医には「神の手」と称される名医がいるが、彼らは普通の外科医とどこが違うのか。

「私は普通の人より空間認識能力に恵まれているんだと思います。例えば、『明日は大変な手術がある』という日は、寝床で目を閉じると頭の中に、ごく自然に心臓の3D画像が浮かび上がってくるんです。そしてその画像をあらゆる角度から覗き込むように、頭の中で自在に回転させることが、ほとんど無意識にできる。その頭の中の画像で『ここはこうなっているから、こうやって。ここは10針ぐらい糸をかけて…』といった具合に繰り返し、翌日の手術のシュミレーションをするのです。

こういう感覚は持って生まれた能力で、子供のころから変わりません、友人の家に遊びに行って、次にまた遊びに行く時、まったく違う道を通ってもちゃんと目的地にいける。一緒に行った友人は『どうしていったこともない道を知っているんだ?『と不思議がるのですが、私の頭の中には常に東西南北と距離感が入っているので、一度行ったところは迷いようがない。



『週刊現代』




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