加藤のメモ的日記
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2011年02月16日(水) 万死に値する大罪

政治音痴の素人政治家に、国政をゆだね、安保・外交政策を左右されることの怖さに、身震いがした。すべてが浅はかな思いつきと行き当たりばったりの政治公約・理念と信念なき政策運営だったことが、改めて明らかになった。鳩山由紀夫前首相が、本誌などのインタビューに答え、明らかにした普天間撤去・移設問題の“真相”のことだ。

政治家の言葉の軽さ、政党の約束の無意味さ。そしてこの国を動かす主体は首相や閣僚、政治家ではなく「官僚」であることを、鳩山前首相は明確に証言した。この国の民主主義の底の軽さ、基板の危うさを知った今、国民は日本を真の民主主義国家とするために早急に政治・行政改革に取り組み必要がある。

鳩山民主党代表が普天間基地問題で、普天間飛行場の移設先は「国外、最低でも県外」と公約したのは紛れもない事実だ。が、総選挙で大勝し、政権交代を実現するやわずか8カ月で「国外、県外はやはり無理」と、県内・辺野古案に回帰し、県民の怒りを買い、政治不信を招いた。

辺野古回帰の理由を問われ「学べば学ぶほど(海兵隊や各部隊が)連携し抑止力を維持していることがわかった」と語った。「海兵隊抑止論」が沖縄に海兵隊の継続駐留を認め、普天間基地の辺野古移設を正当化する論拠とされた。だが、それから8ヵ月後、鳩山氏は「辺野古移設しか残らなくなった時に理屈付けしなければならず、『抑止力』という言葉を使った。方便といわれれば方便だ」と、あっさり認めた。

これほど言葉の軽い政治家を見たことがない、そして、自らの言葉に無責任な人も。政治音痴の素人政治家が国を動かし国民を翻弄し、政治不信を高める。万死に値する大罪だ。鳩山氏が論拠に上げた「抑止力」は「ユクシ(嘘=沖縄方言)力」であると、沖縄県民の多くが指摘し、やゆしてきた。

米国務長官すら「海兵隊の機能」を疑問視し、米軍幹部ですら「有事の米国民救出」を第一の昨日と明言し、米議会は「海外駐留削減と海外基地基地閉鎖」の論議を始めていることを県民は知っているからだ。知らないのは鳩山氏と民主党政権の閣僚、そして米国追従が国是と自己保身的に信じる防衛、外務省を中心とする官僚らだ。

首相を辞め、正直に語れるようになった鳩山氏は「抑止力」は方便で、県内回帰のための後付けの説明と認め、謝罪した。鳩山氏は公約実現に否定的な北沢俊美防衛相、「県外」公約自体を否定する岡田克也外相(現幹事長)、くい打ち工法で辺野古移設を進言する岡本・元首相補佐官の存在なども、辺野古回帰の要因と語っている。

官僚主導の限界
官僚については「防衛相も外務省も沖縄の米軍基地に対する存在の当然視があり、数十年の彼らの発想の中で、かなり凝り固まっている」と説明している。そして首相でありながら官僚、閣僚すらリードできなかった自らの力量不足を敗因と認めている。

琴は謝罪で住む話ではない。辺野古回帰の論拠の「抑止力」は方便で、本当の理由は「閣内不一致」と「官僚の壁」、自身の「力量不足」と証言したからだ。指導力を欠き、官僚に翻弄され、身内の閣僚からも見放される、明らかに首相になってはいけない人が、この国を担う。民主党政権の限界も露呈している。

普天間問題の解決策は「オバマ大統領との直接対話」と指摘した鳩山氏だが、それすらも官僚の壁に阻害され、不発に終わっている。民意に沿おうとする首相が、沖縄基地の過重負担を当然視し、対米追従を是とする官僚に牛耳られ、辞任に追い込まれる。これが、日本の議会制民主主義の現実。官僚主導政権の実相である。

米国の論理に洗脳された官僚たちの言い分を検証もせず。辺野古移設を主張する菅直人首相の不作為の罪はより重罪だ。辺野古移設の根拠となった「抑止論」のウソが明らかになった今、菅首相はこの国の政治を「官」主導から「菅」主導に転換し、普天間の県外撤去のみならず、在沖米軍の駐留見直しに着手すべきだ。



『琉球新報』



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