加藤のメモ的日記
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日本では、寒冷な地を好むヒグマは北海道に、温暖な地を好むツキノワグマは本州と四国に生息しており、九州地方ではすでに絶滅しているという。岐阜県飛騨市のマタギ(68才)は「30年以上山に生きてきたが、最近山が荒廃している。何より恐ろしいのはこのあたりのクマの食べ物の変化じゃ。クマのフンで一目瞭然だが、ドングリを食べていたツキノワグマが魚やカモシカを食いよるんじゃ。あり得ないことや。そのうち人間まで食べるようになる。
人里近く現れたクマたちが飢えているのは、彼らが痩せているという多数の証言から明らかだ。「こんな町のお寺にまで入ってくるなんてことは初めてのことで驚きましたよ。ただクマはお腹がぺしゃんこでした。捕まえたあとで県が解剖をしたら、腹の中は空っぽだったそうです、何も食べていなかったのでしょうね」
人はクマを見て怖いと感じるが、クマのほうも人が怖い。しかし空腹だから冬眠を前に貪欲に食料を求めて人里に下りてこなざるをえない。そんな獰猛かつ臆病なクマと遭遇しないためには、音を出すことが有効だ。
「クマは孤独を好む動物で、他の動物や人間と遭うのを嫌う。だから自然にはないような音を出すことが大事です。ただラジオなどはクマが音に慣れてしまうので効果は薄い。鈴もよいですが山に入る時は遠くまで響くホイッスルを10分に1回ぐらい鳴らすのが一番効果的です」(北海道野生動物研究所所長)
実際取材した各地域では児童のランドセルから鈴の音が聞こえてきた。しかし、いきなりクマと鉢合わせした場合はどうするか?兵庫県佐用町の井口さん(66歳)は、自身がクマと何度も対峙している経験からこう話す「ばったり出会った途端、背中を見せて逃げると、必ず襲ってくると考えたほうがいい。大声を出すのも逆効果。かえってクマを興奮させてしまう。一番は黙って睨みつけながら後ずさりすること。こっちが慌てなければ、クマも襲ってこない」慌てず、騒がず、平常心こそ大事である。
「かってはクマの住む森と人の住む地域の間には猟師たちがたくさんいて、彼らがクマたちの人里への侵入を防ぐ“抑止力”になっていたんです。ところが、猟師たちが激減し、抑止力が失われてしまったことがクマが出没する要因の一つなんです」
『週刊現代』
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