加藤のメモ的日記
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| 2011年02月02日(水) |
アフリカは文明の未来(7) |
そうしますと、アフリカにはサハラ砂漠があって、広大な土地があるにもかかわらず人を養える容量は、実は現在の人口水準を見ても、もう限界であるということですか。
そうです。アフリカは非常に人口密度が低いのです、こんなに低いのになぜもう限界なのかという疑問は当然わきます。ご指摘のようにサハラ砂漠があり、高山があり、沼地がありといった具合で、結局は全アフリカの可耕地は20%程度。しかも、農地の生産性が際立って低い、実際にはその半分でしか生産活動ができないという現状があるわけです。
そういう意味では、インドなどは土地という意味では豊かなのでしょうか。
いいえ。インドの飢餓人口は絶対人口からいうと世界最大です。
自然の力という点から見たら、たとえば日本は人口も多いけれども、土地の力もそれなりに豊かですね。では、アメリカはどうなのでしょうか。さらには、中国はどうなのでしょうか。あれだけの人口で割ってみると、中国も限界に達しているのではないでしょうか。
中国は、1998年まで自給自足でしたから、まだ輸入食料が少ないのです。その後輸入国に回りましたけど、まだ、自国の生産量は大きい。ただ、中国は「一人っ子政策」の反動でこれからものすごい勢いで高齢化が進みます。ですから、おそらく2030年以降、中国の高齢化は今の日本の高齢化の比ではないでしょう。生産労働力は2015年をもって中国は減少に転じる。その後、中国がどうなるかは想像がつきません。しかも、社会保障制度は整っていませんから、一人の子供がどうやって両親と祖父母4人の大人を養っていくのか。恐ろしいようなシナリオがいっぱいできるわけです。事実、そういう資料が出ています。
話を聞いていると恐ろしくなってきますね。
今日は、崩壊のシナリオというテーマを与えられていますので、怖い話をするときはこういう話になるわけです。明るい話を描くのであれば、それなりに描けます。例えば、地球温暖化といって大騒ぎをしていますけれども、地球温度が冷えているところもあります、南半球は気温が上昇していますが、南極の中央部の気温は下がり続けています。溶けている氷河もあれば、逆に増えている氷河もある。あるバイアスがかかった情報を重ねると恐ろしい地球も描けるし、恐ろしくない地球も描けるわけです。
僕はあまりアフリカのことは詳しくないのですが、アフリカを豊かにするのは難しいと思います。先ほどいった食料生産の面で、なにか大地との関係が危ない。あそこは、野生の王国にして、シマウマとかゾウなどの野生動物が住んでいて、人類は住まないとか、将来的にはそういうイメージかと思っているのです。住まないわけにはいかないだろうけど、サハラ以南のアフリカはそういうふうになるのでは、と思っています。
よくいわれているのは、どんな金持ちの国でも生活保護世帯がある。日本でも生活保護世帯があるし、スウェーデンやノルウェーの高福祉国でも生活保護世帯は存在する。アフリカは、人類の生活保護世帯だと割り切るしかないという意見もある。明るいシナリオは、中国は2015年を境に労働人口が減っていく。おそらく、東南アジア、ベトナムとかタイとかインドとか、だいたい2030年に労働人口が減り始めます。その後、世界が安い労働力を求めるならアフリカしかない、ということになれば浮上する芽が出てくる。ちょうど今のインドのアウトソース・ビジネスみたいなものが、アフリカで起きるのではないかという期待もあるのです。
それはあるでしょうね。アフリカは地下資源が豊富で、いくつかの国は資源輸出国として経済発展を始めています。
しかし、資源国というのは、価格が暴落してしまっては元の黙阿弥です。過去10年間、アフリカの経済成長は5.5%あり日本をはるかに上回っていました。ところが今回の経済不況によって2009年には1.8%にまで下がり、おそらく2010年はマイナスになるのではないかという予測が強くなっている。資源ブームが去った後のアフリカは、もっと悲惨な悲惨な状況になるかもしれません。
文明は人類に、欲望の無限拡大をもたらすことになった。特にその圧力は森林に集中した。多くの人が鉄の便利さに目覚めて、鉄の製造が増えるほどに、精錬に必要な薪炭の生産も急増していった。このために大量に木が伐られ、乾燥性が高く降雨が冬に集中する地中海性気候のように森林再生力の低い気候帯から、森林が消えていった。
それが早くから製鉄の始まった西アジアであり、地中海沿岸であり、金属器が盛んにつくられた中国華北地方だった。さらには西ヨーロッパでも森林破壊の引き金になった。鉄器の普及は、自らの首を縮める程に環境を破壊していった。日本のタタラ製鉄でも、「山が鉄を作る」という言葉があるように、5トンの鋼をつくるのに、木炭15トンが消費され、一回の製鉄作業にひと山の樹木を丸ごと刈り尽くすともいわれた。日本は森林再生には最適の気候条件であり、早くから植林がおこなわれたことで、ヨーロッパのような状態にはならなかった。日本は世界の例外といえる。
世界人口は毎年7000万人づつ増加しており、増える一人ひとりに居住のスペース、食料、衣料、エネルギーが必要だ。すでにこの世に産まれている私たちが、未来世界と進んで資源を分かち合うことができるだろうか。
国連の人口予測では、2050年に91億人に達する。増加する人口の98%が貧しい国の人たちである。私は80億人に達する2025年当たりから、何らかの大変動が地球に現れるのではないかと考えている。
日本のの偉業は衰退衰退する一方で、ついにGDPに占める農業生産は1.0%までに低下した。とりわけひどいのが米以外の農産物である。しかし食料不足の一方で、世界的には肥満が急増している。中国では日本の人口よりも多い肥満児がいる。一人っ子政策の中国では。両親二人と、祖父母4人の6人の大人が一人の子供を甘やかす結果、肥満児が急増しているともいわれる。世界の成人男子の肥満指数をみると、とくに高いのはアメリカの30%で、日本は非常に低い数字となっている。
さらなる問題は、今、世界の多くの地域で、水資源を地下水に頼り始めていることだ。その代表がアメリカで、小麦生産のおそらく4割が地下水を水源とした生産となっている。とりわけ世界の穀倉地帯といわれる米中西部は、地下水の減少量が著しく、ひどい時には年間10メートルずつ地下水が下がっているというほど深刻な地域もある。最近は、地下水に塩水が入り始めていて、アメリカの農業の崩壊は地下水の破たんで生じるというのア、有力な説になっている。このような地下水の枯渇は、アジア全域、アフリカにも当然起こっている。
食料資源の枯渇も問題である。世界の漁獲量のデータをみると、ついに限界が来た、1980年代以降、世界の漁獲量が下がり始めたのだ。さらには人間による乱獲で東大西洋やペルー沖では、半分ぐらいの魚種が姿を消した。世界の天然資源の中で最初に限界を超えるのが「魚」であることは間違いない。したがって、今後は魚の値段がますます上がっていくことだろう。
HIVウィルスは、世界で4000万人ぐらいが感染しているといわれている、年間世界では300万人ほどが亡くなっている。HIVウィルスは、14世紀のペスト、1918年のスペイン風邪と並んで、世界史の三大疾病といわれている。HIVウィルスは。完治しなくともその発症を抑える薬が開発され、先進地域では死に至る病気ではなくなりつつある。しかし、アフリカではいまだに薬が高価なため、毎年歳200万人ほどが命を失っている。例えば、スワジランドでは、なんと成人の23%がエイズに感染している。
ノーベル賞やアカデミー賞まで受賞したゴア元大統領が、電気代とガス代に年間500万円以上も支払って、温水プール付きの広大な屋敷に住んでいたという「不都合な真実」が暴露された。地球の将来の不安を語る彼も、自分の生活を変えることはできなかった。
文明というのは、同じ緯度でしか動きません。メソポタミアアから始まって、エジプト、インダスなど同じ緯度でしか伝播しないのです。緯度が変わると温度差によって農作物の種類が変わってしまう。そのため4大文明ともほぼ同じ緯度なのです。黄河文明だけがやや緯度が高いんですけど。アフリカの場合、それよりも緯度がずっと南に下がっています、オーストラリアなどでもそうですね、オセアニアでも、結局文明は起こらなかった。
アフリカは野生動物にとっては生きやすい土地かもしれないが、人類の暮らしというものにとっては、必ずしもよいとはいえない。したがって、最初に人類がアフリカで誕生したが、住みにくいのでアフリカを出たのではないか。ゴリラやチンパンジーが暮らすには良いところかもしれません。狩猟採集民にもよいかもしれませんが、農耕民には適していなかったのではないか。人類が誕生した地であるにもかかわらず、なぜ大地にはいつくばって何千年も生きてこなかったのか。アフリカの農業からは見えてこないのです。
ブッシュマンの膨大な研究があります。ブッシュマンのような狩猟採集民族と農耕民族とではどちらが幸せかという研究があります。労働時間を比べますと、ブッシュマンは週に平均2,3日しか働かないのです。シマウマを一頭捕れば、一家が1週間食べていける。あとは遊んでいるわけです。農耕民は、その何倍もの時間働いて、土地を耕して水をやって雑草を除かねばならない。労働時間からいうと、はるかに狩猟採集民のほうが得だといえます。
次に、栄養面を見てもブッシュマンは84種類もの植物を食べています。栄養価を計算するとはるかに、狩猟民のほうがよい数値が出ています。化石骨から時代別に身長を推定した研究によると、農耕時代に入って低くなります。栄養不足のためですね、なぜ人間は農耕民になったのかという議論がそこで始まるわけです。そういう意味では狩猟民対農耕民というのは、昔から面白い議論があります。
例えば、森の音が人間の心に大きな影響を与えている、と大橋先生はおっしゃっています。森の音を聞くことで、脳内の神経伝達物質の分泌が変わり、人の心が変わる可能性はないでしょうか。
遺伝学者からこんな意見もあります。世界的に少子化が一気に進んだため、遺伝形質はどんどん劣化しているという。つまり、多産多死が健全な遺伝子維持の鉄則でしょう。それが世界定期に色覚障害や近眼遺伝子が増えているとする説もあります。これらはすでに現代においては、生存を左右する条件ではなくなったからです。そういうふうに考えると、あと何百年か経った場合、人間の遺伝子は一気に劣化して、そこで人間が自然崩壊を起こしてしまうということはないですか。
それはあり得るわけです。事実進んでいるともいます。しかし、そういうものを視野に入れた新しいライフスタイルの模索が行われているでしょうか。こういうところでそれを始めるべきだと、私は思います。
『地球文明の危機』
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