加藤のメモ的日記
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2010年12月15日(水) 金正日「死亡」に備えよ

すでに「金正日の死」は目前に迫っていると、各国情報機関は分析している。「韓国や米国の情報機関では、もはや金総書記の健康状態は末期的であり、長くて5年、おそらく2〜3年以内に思慕する可能性が高いと判断している。また、中国共産党内ではさらに短く、1年以内の死を予測しているという。金祖書記は現在68歳。08年に脳卒中で倒れて以降は常に健康不安説がささやかれてきた。

自分の死期がそう遠くないうちにやって来ると悟った時、金総書記がなるべく早く後継者の三男・正恩氏に体制を引き継ごうと考える。それ自体は政治家や家業を持つ親ならば自然な発想かもしれない。だが、その息子はまだ28歳で、実力も未知数。

韓国防衛省幹部はこう断言した。「今年3月の哨戒艦沈没事件を発端とする一連の武力攻撃は、あまりに煩雑で連続的すぎる。北は金正恩に後継者としての”箔”をつけるために、矢継ぎ早に我が国に攻撃を仕掛けた。正恩が北の国内で『軍事の天才』などと喧伝されている以上、最大の敵であるアメリカに対して一定の戦果をあげない限り、後継者としてふさわしい伝説は完成しない。そのためには、定期的に自国付近に飛来する米偵察機に攻撃を加える可能性が高い。

次なる大規模攻撃実施の時期について、ある北朝鮮ウオッチャーが語る。「直近では12月24日が濃厚だとみています。24日は金正日総書記が朝鮮人民軍の最高司令官に就任した日(91年)であるとともに、正恩氏が金正日軍事総合大学を卒業した日(06年)でもある。伝説作りにはうってつけの日です」親子には禅譲の日までの猶予が残されていないことに焦り、伝説づくりのために暴走を続けている、それが一見、強気に見える金王朝の実態である。

民間内部告発サイト「ウィキリークス」が入手した米外交公電によれば、今年2月韓国は駐韓米大使に対し「北朝鮮は金総書記の死後2〜3年で崩壊する」との見方を伝えたという。今回、本誌は日韓中の北朝鮮専門家に取材したが、正恩氏えの権力移譲がすんなり成功すると予想する専門家は皆無と言っていい。半年から1年もすれば、党や軍から不満の声が吹き上がるのは間違いない。

不穏な動きをするのは長老ばかりではない。不気味なのが、正恩氏の異母兄であり、01年5月に日本に不法入国を試み、入国管理局に拘束された長男正男である。正男氏は現在、マカオを拠点に活動しているとされ、日本のメディアに対して、世襲には反対であると語ったこともある。現在の金ファミリーから見れば、お荷物のような存在だが、国内外に今でも正男氏を担ごうとする勢力がある。彼の世襲反対や北朝鮮に自由が必要であるという主張はいたってまともで、中国共産党内では国際感覚のあある正男氏ならば、交渉が成立すると期待し彼に後を継いでもらいたいと願う声は多い。

さらに、地方の軍人に内在する経済的な不満が爆発する可能性も高い。地方にいる現場レベルの兵士たちは経済劇にかなり困窮している。彼らの大半は農村出身で、自分たちの故郷がどれほど貧しいか身に染みてわかっているために、金一族の支配に対する怒りも強い。

金総書記の死後、地方で食料を求めるデモが起きた場合、本来これを鎮圧するはずの地方軍が同調し、反乱軍として金一族の側近部隊である護衛司令部と衝突する恐れもある。そうなれば内戦状態は避けられない。

軍長老の謀反、金正男氏の復権、地方軍の反乱…。金総書記が死亡すれば、これまで国内に燻ぶっていた火種が一気に燃え上がりかねない。ある地方共産党幹部は、そうした混乱が起きた倍、正恩氏に事態を収束させる力はないとみている。

正恩を支持しているグループというのは、軍幹部や党幹部の二世が多い。そして2世たちは親の威光で出世しただけのひ弱な連中だ。一方で、金一族に不満を持つ軍人らは叩き上げが多い。この両者が衝突すれば、どちらに軍配が上がるかは自明だろう。敗れた正恩氏らが中国を頼ってきたとしても、かくまうのは2カ月までだ。その後はスイスなどの第三国に放り出す。彼らを匿っていると、新体制となった北との交渉もできない。その先のことは知ったことではない。

北朝鮮に限らず、独裁国家のリーダーたちの末路は哀れだ。他国に亡命できればいいほうで、反乱軍によって粛清されることも珍しくないことは歴史が証明している。正恩氏が暗殺される可能性について聞いたところ、この共産党幹部は「あり得る話だが、先に言ったように、体制崩壊後の彼のことは、我々の関知するところではない」と語った。「金王朝」が内部から崩壊しつつある兆候はすでに見えている。


週刊現代




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