加藤のメモ的日記
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2010年11月27日(土) 仙谷の”すり替え”

ビデオ流出ばかりに焦点が当たっていますが、問題の本質は、日本が戦後65年間ないがしろにしてきた海の防衛「海防」をいかに強化すべきかという点にあります。今回は、本来なら主権侵害の大罪であり”領海侵犯”を“密漁”とみなして漁業法で対処した。根本的に海洋国家・日本の海の守りのあり方を考え直さなければいけません。

尖閣列島で問題が起きた時、日本の主権をはっきりと主張すべきでした。当時の前原国交相が話していたように、中国漁船が体当たりしてきたのはビデオを見れば一目瞭然なわけですから裁判にかけて、国内法で対処すべきでした。菅内閣は中国と戦わなければならないのに、逆にペコペコして、船長をすぐ釈放し、ビデオ公開もやめてしまった。そうした対応を主導した仙谷長官の判断ミスの責任こそ問われなければいけないのに、船長釈放の時は「検察が全部決めた」と言い、今回は海上保安庁の情報漏洩だと言って、ビデオ流出の犯人探しに問題をすり替えてしまった。

マスコミも菅首相と仙谷氏を追っかけないといけないのに、ビデオを流出した海上保安官を追いかけた。そもそも流出したビデオが国家機密といえるのか。中国船長の裁判上、公表できないという理由を挙げていましたが、すでに釈放され公判そのものが存在しません。また7分間のビデオは一部の国会議員に公開されました。これで事実上、国家公務員法の守秘義務で守られるべき国家機密とはいえなくなっています。

内部告発者を不利益処分としてはならない、とする公益通報者保護法を準用するなら、ビデオを流出させた海上保安官は免責です。私は減給などの行政処分をして、海上保安官の仕事を続けさせるほうがいいと思います。もし辞めさせたら、ビデオの公開を求めた人たちの英雄になって、反民主主義の動きが広がるでしょう。

鎖国を解いて以来、日清戦争、日露戦争と「海防」は日本の国防の基本方針になっていた。それが戦後65年、この概念がパッと消えてしまった、中国は13億人の生存のために、尖閣諸島の領有権を主張して海洋資源を取りに来ます。これを「友愛の海」で防げますか。今こそ「海防」を見直すチャンスなのです。


『週刊朝日』 佐々淳行


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