加藤のメモ的日記
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2010年11月18日(木) 暴力団予備軍もブランド志向

山口組の中堅幹部はこう断言する。「抗争がわしらを取り締まるチャンスという警察の理屈は確かにその通りかもしれん。そやけどわしらからいえば、抗争こそ力なんや。抗争なくして組織を大きゅうすることなんて、でけへん、勝ったら確実に組織は大きいなる。その代り負けたら組はないもんと思わないとしゃあない。

あの一和がええ例や。なんぼ5000人や6000人や言うたかて、負けたら今はゼロ。惨めなもんや。その代わりヒシは倍になっている。その上に組織を引き締めるためには、抗争ほどええ材料はないんや。いまんところ抗争に関する限り警察の論理により、わしらの論理が確実に勝っている。抗争で山口組が大きくなることはあってもつぶれることは絶対ない、そやから誰が抗争を避けて素通りするねん。やるだけやるに決まっとるんですわ」

確かに2万人以上が膨れ上がった組織が、まなじの戦争で負けることはもはやありえない。指定三団体のどれかとでも抗争を起こさない限り、組織が疲弊することもない。加えて山口組の場合、この人手不足の時代に、若年の組員は増える一方なのだ。警察庁の調べでも全国の組織暴力団のうち昭和60年には20歳未満の組員は全部で1500人と見られていたが、最近では3000人を超え、20代の組員を入れると、全暴力団の3分の一は若手組員だという。

しかもその若い暴力団の大多数が山口組。若者の間でもブランド志向が強く「どうせ極道になるならヒシ」という傾向が強く、他の組織には見向きもしない。おかげで山口組は、人材確保に四苦八苦の一般企業を尻目にずっと買い手市場を維持しているという。その証拠に最近の抗争事件でヒットマンとして動いている組員は、21、2歳がほとんどなのである。

ヒットマンは山ほどいる。加えて武器には不自由しない。それが今の山口組を取り巻く状況なのだ。かっては「チャカ(拳銃)一丁は組員10人に匹敵する」といわれたものだが、今組員一人に拳銃一丁の割で流れているということは警察白書でさえ認めている。加えてバズーカ砲から手りゅう弾、機関銃まで用意している組もあるといわれている。

かっては模造拳銃が幅をきかせ、警察もマブチャカ(本物の拳銃)を押収したら、それなりの成果があったとして喜んでいたものだが「今じゃ模造拳銃なんてみっともなくて使われへん。あれは銀行強盗専用」と若い組員でさえ言ってのける。

別の山口組組員はこんな解説をしてくれる。「はっきり言って今のヒシは盤石の構えと言っていい。組織的にはここ数年なかったほどしっかりしている。一つには、あの四代目の実弟である姫路の竹中さえ、少しでも組織を外れるような言動があれば徹底して切ってしまう。そうやって身内でも容赦なくやってしまうところに今の山口組の強さがある。そやから一つ抗争が起きると、戦争したくてジリジリしとった連中が上の命令なんか待たずに、鉄砲玉になっていきよるんや。それが強さなんや」というのである。

しかもこの話をしてくれた組員によると、山口組は組織人員2万数千人にも膨れ上がってしまった。そうなると下の者はなまじのことでは出世できない。勢い若い連中は出世への切符を手っ取り早く手に入れるために、懲役覚悟でいくらでも鉄砲玉になって行くというのである。

恐ろしい話だ。組では「抗争こそが力だ」と言い、ヒットマンになる若い者も、チャカも腐るほどある。言うなればここ10年ほどの間、山口組を壊滅させるどころか、抗争という最大のチャンスを生かせず肥大化するに任せてきたツケがまわってきたのだ。その結果、山口組はやりたい放題、町中をのさばっているのである。



『警察が危ない』


加藤  |MAIL