加藤のメモ的日記
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| 2010年11月17日(水) |
インプラント治療の危うさ |
歯科インプラントは、欠損した歯を補うためにチタン製の人工歯根(インプラント本体)をあごの骨に埋め込み、それを土台として人口の歯を取りつける治療法だ。適切に治療すれば、天然の歯と同じように噛むことができる優れた特性をもっている。しかし、民間のセミナーに教育を頼っていることが、トラブルが多発する要因の一つとされている。
歯科業界関係者によると、インプラント市場には大手から中小まで、30社とも50社ともいわれる企業が参入している。不況の影響で今年は落ちるとみられているが、昨年までな2ケタ台の成長が続き、市場は推定で「200数十億円」規模まで成長。年間の販売本数も40万から45万本と推計されている。歯科医師にとっても、メーカーにとっても魅力的な市場であることは間違いない。
しかし規模が大きくなればなるほど、トラブルに見舞われる患者は増える。九州インプラント研究会が87年から05年までの期間で、10年を経過した患者1000人を対象にした調査によると、約5%に合併症が発生。なかでも「インプラント周囲炎」(周囲の歯茎が炎症を起こし、インプラント本体が見えたり、抜けたりする)例が157件と突出して多かった。
不十分な説明がトラブルを生む
また、同じく前回のケースにあった「知覚麻痺・しびれ」も33件と多い。これは下あごの骨の中を通る神経をドリルで傷つけて起こる障害で、唇の半分、下あごの皮膚、口の粘膜などの感覚がなくなる。このため、食べこぼしや飲みこぼしをしてしまう。
死亡事故が起こることはまれだとしても、埋め込んだはずのインプラントが抜けてしまったり、合併症が起きたりすることを、どれだけの歯科医師が治療前に患者に説明しているだろうか。「患者にインプラントを受けさせるためには、いい面ばかりを強調する。そのことがあとでトラブルを引き起こすもとになっている」と、指摘するしか医師も少なくない。
「『簡単ですよ』『安価ですよ』と業者にすすめられて講習を受ける歯科医師が多いようですが、基本的な歯科治療を会得してから、有力な治療の選択肢の一つとしてインプラントを学ぶべきです。100%の成功は絶対ありませんが、最善の結果が得られるように治療を完遂するのが医療者の責務のはず。失敗は必ず患者さんに被害を及ぼすことを肝に銘じる必要があります。
インプラント治療にたけた歯医者を探すには、口コミやインターネット、医療雑誌などのさまざまな手段を使って歯科医院の情報を集める。その中からここぞと思う歯科医院に何軒か電話をかけて、スタッフにいろいろ質問してみる。反応が良かった医院に直接出向き、歯科医院の説明を聞く。ここまでは無料でやってくれる歯科医院がほとんどですから、少しずつ絞り込んでいきます。
情報集めをする際には、歯科医院というハコではなく、「歯医者」に重点をおいて調べることです。例えば歯科医の略歴には「OO学会認定医(専門医)」というものがよく書かれています。一般に認定医と聞くとその道のプロフェッショナルと思うかもしれませんが、実は認定をしている団体や基準はバラバラ。メーカーが自社製品を買ってもらいたくて開く一日講習を受けただけの認定医もあったり、客寄せの看板が欲しいために、書類とお金を出すだけで認定を受けられるケースもあったりします。かなりインチキな認定医がいるのも事実なので「認定医」をそのまま信じてはいけません。
ではどんな認定医なら大丈夫か。私がお勧めするのは「日本口腔インプラント学会の専門医」です。国内最大の学会で、専門医になるには100時間講習などの厳しい基準を設けています。歯科医院の待合室には医者としてもキャリアの展示場です。過去の学会や勉強会、講習会などに参加したという証明書や認定症などが額縁に入れて飾ってあります。
それを見ればいつ、どこでどんな勉強をしてきたか、どんな学会の認定医なのかもわかります。日本口腔インプラント学会の100時間講習の終了証なのか、それとも、メーカーが自社製品を買ってもらいたくて開いた一日講習の終了証なのか、そのあたりを見抜いてください。インプラントの素材や技術は日進月歩ですから、勉強を続けている歯医者は信用できるといっていいでしょう。
『週刊朝日』
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