加藤のメモ的日記
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2010年10月15日(金) 「遺伝子組み換え食品」論争の低水準

遺伝子組み換え食品を食べると、その遺伝子がヒトノゲムに組み込まれることはないのだろうか。消費者の方たちからよく「遺伝子を食べて、胃の壁を突き抜けて体内に入って、ガンを起こしたりすることはないのですか」と聞かれます。私はまず、「それでは皆さん、遺伝子を食べたことがありますか」とうかがうのです。そうすると皆さん「絶対にありません」とおっしゃるのですが、実際はトマトやお刺身をはじめ、あらゆる食品には何億、何十億という遺伝子が入っています。しかし、すべて消化されまてしまいます。

遺伝子は何かということが、十分に伝わっていないような気がします。日本語で「遺伝子」というと、何か「遺伝する物質」というイメージが強いのですが、遺伝子そのものを食べても遺伝するわけではありません。人間は一万年以上、色々な食品の中に入っていた遺伝子によって、人間が変わったことはありません。それは人間の歴史が証明しています

おそらく日本人の大多数はこの質問者のようなレベルにあるはずである。遺伝子は食べても消化されてしまってなんの害もない。遺伝子を食べるとそれがヒトノゲムの中に入って、何かおかしなことを始めるのではないかというような心配は全くないのだが、何も知らないとそういう心配をしてしまいがちになる。

遺伝子組み換え食品論議では、その他荒唐無稽な心配をしている人たちがたくさんいる。まともな危惧もああるが、ミソもクソもいっしょのレベルになっているので対応する側もミソ、クソいっしょの対応をしてしまって議論のレベルがさっぱり上がらないのが日本の現状である。私自身は遺伝子組み換え食品はに何の心配もしていない。売っていたら平気で買うし、出されたら平気で食べる。遺伝子組み換え食品は環境問題においても、食品の安全性の問題においてもデメリットよりメリットのほうがはるかに大きいと思っている。

遺伝子組み換え作物は、農薬、特に殺虫剤、除草剤のたぐいを確実に減らすことができる。実際作付しているところでは大幅に減っている。そして殺虫剤、除草剤のほうがはるかに人間の健康にとって危険なのである。農薬のような化学物質には、大なり小なり、発ガン性、催奇性、環境ホルモン効果などの毒性があるが、遺伝子組み換え食品にはそのような危険性はない。


『21世紀 知の挑戦』 立花隆


加藤  |MAIL