加藤のメモ的日記
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| 2010年09月28日(火) |
サラ金の終わりの始まり |
70年代後半には毎晩、顧客の家に押しかけて強引に回収したり、一家離散を招いたりするなどの「サラ金地獄」が社会問題になった。その後も、複数の業者から高い利息でお金を借りる「多重債務者」の増加が社会問題になった。転機は、多重債務者らを減らす目的で2006年末に成立した改正貸金業法。今年6月に完全施行された。
同法は総借入残高が年収の3分の1を超える個人向け貸し付けを原則禁じ、上限金利も年20%に引き下げた。この影響で、たとえ返済が滞る顧客がいても、多くの人に高利で貸し付けることで利益をあげるというモデルが成り立たなくなった。苦境に追い打ちをかけたのは、過払い利息の返還だ。
返還のための資金が必要になり、一気に経営が悪化する業者が増えた。全国の貸金業者数はピークだった86年の4万8千社から今年7月には10分の1以下の3千社余りにまで減った。厳しい経営環境の直撃を受けたのが、かって最大手だった武富士だった。過去のモーレツ営業のツケで、営業貸付残高に対する過払い利息返還の負担の割合が大手4社の中で最も多く、10年3月期までの4年間だけで約4.000億円も返還をしなければならなかった。
武富士はメーンバンクを持たない「独立系」。自由奔放に営業していたころは銀行の口出しがないのが強みだったが、08年秋のリーマン・ショック後に社債の発行が難しくなり、銀行の後ろ盾もないことから資金繰りが悪化した。しかも、創業者の故武井保雄元会長自らが武富士に批判的なジャーナリストらの電話を盗聴した事件で03年に逮捕される不祥事などから、「法令遵守に弱点がある」(大手行関係者)との見方が根強く銀行からは敬遠されがちだった。資本・業務提携に踏み切る相手も現れなかった。
武富士は07年3月期決算の純損益が4812億円の大幅赤字に陥った。昨年11月以降、貸し付けをほとんど止め、顧客からの回収や不動産売却などで資金繰りに奔走していたが、万策尽きた。「来るべきものが来た」。大手消費者金融のある幹部は、こう受け止める。
武富士の破綻は消費者金融業界に一層の淘汰を促す可能性がある。他社の顧客も過払い利息をきちんと返してもらえないと恐れ、いったんは返還請求が増えるとみられるからだ。特に中小・零細業者や独立系は一層苦しくなり、破たんや再編もあり得る。
逆に、三菱UFJファイナンシャルグループ子会社のアコムや三井住友FG関連会社のプロミスといった銀行系は資金面でのバックアップがあり、ライバルが減れば有利になる。一方、消費者金融の破綻が相次げば、多重債務者だけでなく、給料日前など一時的な資金不足の穴埋めを消費者金融に頼っていた人たちも借入先に困り、資金繰りに行き詰る恐れがある。業界では、こうした人たちが「無登録のヤミ金融に走り、不法な融資が増える」との指摘もあり、政府はこれらへの対策も合わせて急ぐ必要がある。
『朝日新聞』
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