加藤のメモ的日記
DiaryINDEX|past|will
| 2010年08月18日(水) |
手形決済でラクラク資金回収 |
システム金融はべらぼうに高い金利であるにもかかわらず、その回収率が高いのは、返済方法に手形や小切手などの有価証券を債務者に振り出せているからだ。例えば50万円借りたら、債務者は25万円の額面を記入した手形か小切手を3枚に分けてシステム金融業者に郵便書留で送る。期日はだいたい1週間から10日に一度で、25万円ずつ引き落とされていく。このやり方は商工ローンなどでも同じだが、実はこれが債務者をとことん奈落の底に突き落としていく大きな要因となっている。
これが従来のようなヤミ金融なら、現金融資・現金返済なので万が一返済日に金が都合ができなければ「少し待ってもらえないだろうか」という相談の余地はあった。もちろん「ふざけるんやないで」「きっちり耳揃えて返してもらおうか」と、怖いお兄さんに脅かされることは覚悟の上である。それでも中には「あと1日だけ待ちましょ」「社長さん、また金利がかさみまっせ」と言いながらも待ってくれる業者もいる。なんだかんだと言いながらも返済の「待った」がきいたのである。
ところが、手形や小切手だと「待った」なしとなる。もし手形の決済日に銀行の当座預金に入金していなければ、その事業主は不渡りを出してしまうことになるからだ。つまり倒産である。苦労して築き上げた会社がヤミ金融にまで金を借りて持ちこたえさせてきた会社が倒産の危機に追い込まれれば、債務者である事業主は何としても金を返そうとそれは死に物狂いで金の工面に走り回る。
つまり、システム金融業者は取り立てなどしなくても、銀行任せでらくらく資金回収できるというわけだ。まさに不渡りを出したくない、会社を倒産させたくないという事業主の心理につけ込んだ極めて巧妙な手口である。これが借金返済に走り回る事業主がシステム金融のグループ内で次々と回されて多重債務に陥る原因なのだ。
このシステム金融のグループに一度引っかかれば、長くて半年、ほとんどが3カ月で会社はつぶれてしまう。システム金融の場合、潰れてしまうことを見越して融資しているわけだから、3カ月の間に、元金プラス金利の回収をしてしまう仕組みになっている。
ある街金業者はその恐ろしさを、「システム金融を借りたら確実に倒産する」と証言している。システム金融に手を出した時点で、すでにその事業主の破綻は目に見えている。それでなくても苦しい経営状態の中で、1カ月で50%や100%もの金利がつく金に手を出してまともな経営ができるはずがないからだ。それなら負債額が少ないうちに事業に見切りをつけたほうが傷は浅くて済む。
ところが経営者たちは「何とかなる」「何とかしなければ」という思いからヤミ金融に手を出し、挙げ句の果てには負債をさらに膨らませ、傷口を深くして自滅してしまう。ヤミ金融であるにもかかわらず、返済方法に手形・小切手を使って資金回収率を上げる。これがシステム金融が恐ろしとされている要因の一つなのだ。
システム金融の巧妙な手口の一つに高金利をごまかすカモフラージュがある。万一摘発された時のために高金利の分を金利扱いしないような逃げ道を作っているのだ。その一つが商品売買契約である。まず、50万円の融資額に対して25万円の額面の小切手を3枚振り出す。すると返済合計が75万円となり、明らかに違法な高金利となってしまう。
そこで値打ちのない商品を高値で債務者に買わせて、金利分を商品売買契約にすり替えて高金利をカムフラージュするのだ。送りつけてくる商品は羽根布団、高級万年筆、テーブル、掛け軸、バッグとさまざまだが、一見高級そうな商品ばかりなので値段も高いように思うだろう。ところが実際は倒産した会社や工場から引きあげてきたものなど、元は二束三文で手に入れたものに違いないのだ。これらはすべてシステム金融業者が警察に摘発された時に、違法な高金利をゴマ化す巧妙な手口なのである。
ヤミ金融というと、その背後に怖い暴力団なんかがくっついているのじゃないかと思っている人が多いようだ。だからこそ、怖くて業者のいいなりになったり、本来は返さなくてもいい違法な高金利をせっせと返しているのだと思う。
確かにヤミ金融の中には、広域指定暴力団の企業舎弟となっているところもある。まだ、そこまでいかなくても暴力団の一組員が内職的にやっているというケースも少なくない。取材中、あるヤミ金融業者が紹介してくれた暴力団幹部は「ヤミ金融は暴対法以降、しのぎが減った暴力団の貴重な資金源になっている」と電話で話していた。
一方、貸金業規正法のおかげで、以前のように夜襲をしたり深夜まで電話をかけるといった厳しい取り立てはできなくなった。しかし、法律で定められた範囲内なら今でも借金の取り立てはやっている。そんな時、やはり甘い顔をすると金を回収できないので、つい強面系になってしまうというのは取り立て屋の性というものである。
我々だって友人が貸した金を返さなかったら、つい顔がこわばって眉の一つも吊り上がろうというものだ。それがプロ化したものが、取り立て屋なのだから怖い顔も半端じゃない。しかしだからといって、闇金融の全てが暴力団とつながっているかというとこれは間違いだ。ヤミの世界の者同士ヤミの付き合いはあるにせよ、意外に一匹狼でやっている業者もいる。また暴力団と関係ないというクリーンなイメージを売り物にしているヤミ金業者もいる。
ヤミ金融資金は一体どこからきているのだろうか。例えば、正規のノンバンクやリースの会社の場合は、その資金源は主に銀行からの借り入れで賄っている。要するに銀行から借りた金にさらに高い利子をつけて金を貸し、その利息の差額が儲けとなる仕組みだ。これが上場しているノンバンクともなると、銀行からの借り入れに加えて投資家達の資金も集まってくる。未上場のノンバンクと違うのは、儲かれば配当をするが、赤字だと配当はない。しかも投資なので銀行のように全額返済を迫られることもない。
一方、ヤミ金業者は世間の表に出ないヤミの業者なので、当然銀行からの借り入れなんて100%不可能な話だ。ではその資金源はどこかというと、これが「金主」と呼ばれる人物たち。まあ、一種の投資家のようなものだと考えていただこう。「金主」は、だいたいちょっとした財産家や事業家などで、余った金を運用目的でヤミ金融に投資しているケースが多い。企業舎弟のヤミ金なら、暴力団のヤミのカネが使われていることもある。
いずれにせよ余ったヤミのカネをヤミの金融で増やすのだから、決して表には出せない金であることは間違いない。この時点で、すでにヤミ金融の金は汚れているのである。そんなヤミの金を借りているのだから、その金がきれいに流れるはずはない。仕方なくとはいえ、債務者はヤミ金融から金を借りる以上、その金の性質を認識しておく必要がある。
『笑うヤミ金融』
今年、貸銀業法の改正で借入総額が年収の3分の1を超える場合、新たな借り入れができなくなった。これでヤミ金融業者は笑いが止まらないだろう。サラ金から借りられなくなった人たちは、ヤミ金融に走るしかない。夜逃げ、倒産、自殺が増えるだろう。世間知らずの役人たちは、こんな法律を作ればどうなるか想像できなかったようだ。何もしないでいてくれたほうがよっぽどましだったのだ。
|