加藤のメモ的日記
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歯学部に入る人って、医学部に行きたくても行けなかった挫折者が多いんです。医学部に進みたくて、高校の頃から専門の予備校に通って受験勉強していたのに、受験に失敗したり偏差値が足りなかったりで、仕方なく歯学部に転がり込むんです。「僕は大きくなったら医者になる」という夢を抱くことはあっても「大きくなったら歯医者になって、いっぱい虫歯の治療をするんだ」なんていう子供はいないでしょう。
「歯医者は往診がないから楽だ」「歯医者は夜中に急患で起こされる心配がない」などと昔から言われてますけど、お嫁に行く条件ならともかく、男も女もそうですが一生の仕事を決めるのにそんなことを考える人はいませんよ。
仕事を決める上でありそうな考えは、「歯医者は儲かりそうだ」ということぐらいです。「歯医者になって貧しい人々の命をを救いたい」などと赤ひげのようなことを考えている人なんて、まず、いるわけないんです。「医学部を落ちたら歯学部に行けよ。間違ってもサラリーマンになろうなんて思うなよ」そう親から尻をたたかれ、“歯学部でもいいか”という気になるんです。
私はとにかく歯学部に進みたかったんです。慶応と慈恵医大が目標で現役の時はその2校しか受けませんでした。そして2校とも落ちたら、父親が「全寮制の医学部専門予備校があるからそこに入れ」です。今どき全寮制の予備校があるなんて、信じられなかったですよ。目の前が真っ暗になりました。現役で合格していれば大きい顔ができたし、合格プレゼントでハワイにも行かせてくれる約束だったんです。そんなバラ色の夢はどこかに吹き飛んでしまって、自由のない全寮制の生活が待っていたわけです。
そこでは朝7時のラジオ体操に始まり、一日中勉強勉強の生活です。生活のリズムは軍隊に似ているんじゃないかと思います。朝起きる時間から、食事の時間、風呂の時間まできっちりと決まっているんです。夜11時が消灯の時間ですが、1時や2時まで勉強している奴がいました。
部屋は一応個室なんだけど、三畳間です。しかも窓の外に見えるのが墓地だたんです。こんな世界にいるのは厭だ、何が何でも来年は合格しなければ、と必死になりました。もし落ちたら、また地獄を味わうことになりますから。
一浪した末、慶応と慈恵医大の医学部、そしてO大の歯学部などを受けました。医学部は二つとも落ち、合格したのはO大の歯学部だけです。「来年も医学部を受けるか?」と父親は聞きましたが、とてもそんな気にはなれません。地獄は一年でたくさんだから、結局O大の歯学部に入るしかなかったわけです。
…解剖には献体された遺体を使います。医者の用語でライゲといいますが、大学病院の地下にある部屋にストックされています。その部屋にはアルコールを満たしたプールがあって、そこにライゲがぷかぷか浮いているんです。解剖学の講師に「君たちは15番のライゲを持って来なさい」そう言われて取りに行きます。ライゲはプールの中に十数体浮かんでいました。1年も2年もストックされているんです。プカプカ浮いていている姿を見た時は衝撃でした。でもこれが医学の道なんだと自分に言い聞かせたんです
…解剖実習は女の子であろうとしなければなりません。ほとんどの子は私たちと同じように最初は気味悪がりますが、2週間もすると慣れてくるものです。ただ一人だけ、実習が終ってから退学してしまった子がいました。その子はとても可愛くて子供っぽいぐらい。何でこんな娘が歯学部に入ったんだろうと思っていました。
医学部や歯学部に入ってくる女の子って、表面はおとなしくても芯が強いっていうか気が強いもんなんです。ところが彼女はキャピキャピしていて女子大生のノリだったから目立ちました。そういう性格だったんで解剖でショックを受けてしまいノイローゼになって精神科に通っていたそうです。
結局耐えられずに辞めてしまったわけです。将来私に子供ができても、女の子だったら医学部や歯学部に入れるつもりはないですね。あるタイプの女の子には向かない職業といってもいいんじゃないかと思いますから。仕事としては精神的にも肉体的にもハードですし、偏見といわれれば確かにそうなんですが、これが歯科医の実感です。
『私は悪い歯医者』
女の歯科医は要注意である。男の歯科医なら残す歯でも、女の歯科医は抜いてしまう。私の友人も超短波スケーラーという歯を掃除するという器具で歯ぐきを切られ、10か月ぐらい経ってから奥歯から動き出し2年たった今では9本の歯を失った。損害賠償を請求しようと弁護士に相談したら、裁判費用が60万円かかるといわれたという。裁判する場合はセカンドオピニオンといって、なぜこうなったのかという理由をもう一人か二人の歯医者に診断書に書いてもらうことが必要で、それが裁判の勝敗を決するということである。しかし他の歯科医も超短波スケーラーを使うので、これが原因だとは言わない。歯槽膿漏です、とか歯周病です、としか言わないので、結局泣き寝入りすることになる。
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