加藤のメモ的日記
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2009年05月17日(日) 大往生

「赤ちゃんの時に可愛いと言われて、
花嫁の時に美しいと言われて、
お婆ちゃんになったら、また、可愛いと言われたいわ」

「人生ね、あてにしちゃいけません。あてになんぞするからがっかりしたり、悩んだりするんです。
あてにしちゃいけません。あてにしなきゃ、こんなもんだ、で済むじゃありませんか」

「ガン保健は、ガンになったら支払われるということではいたんですが………胃潰瘍だと医者が言うんです。どうもガンだと思うんですが、はっきりいってくれないんです。体はどうでもいいんですが、保険はどうなるんですかねぇ」

「体がちょっとおかしいぐらいで医者に行ってはいけません、たしかにいつもと違う、という自覚があってからで大丈夫です。今の診察技術だと、ちょっとおかしいを、とてもおかしいにしてしまう危険のほうが高いのです。人間ドッグに行ってから急に体長が崩れるのは、そのせいです」

「病人が集まると、病気の自慢をするんですよね。もちろん、重い人が尊敬されるんです」

「生命ってものは遺伝子のコピーなんですよ。人間だって威張っても、たかがコピーの機械なんです」

「手術は勝負です。賭ける部分がないと腕も磨けません。だから患者にも賭けてほしいと思うんですけどね」

「近代医学は二百年、東洋医学は二千年。
どっちを信用すればいいかよーく考えたほうがいいよ」

「ただ死ぬのは簡単なんだ。
死んでみせなきゃ意味がないよ」

「死ぬ前になりますと、人間は炭酸ガスが増えるんです。この炭酸ガスには麻酔性がありますから、最後はそれほど苦しまずに終るようにできているんです」

「当人が死んじゃったということが気がついていないのが、大往生だろうね」

「俺が死んだら教えてくれよ」という小話もある。

「ご臨終です……これが上手に言える医者になりたいと思います。昔は心臓が止まって、呼吸が止まって、瞳孔が開けばいいんですが、今は心電図ですからね。死んでいても、何かの拍子に動く時があるので困ります。だから上手にスイッチを切っておいて・・・・・・ハイ」

「病院で死ぬってことは、病院に殺されることです」

「年をとると、だんだん世の中がつまらなく見えてくるんですよ。つまらなくならなきゃ未練があって死ねやしません」

「死んだっていうからおかしいんだよ。
先に行っただけなんだから」

「死ぬってことはあの世とか、親のところに行くって感じだと思います」

「八十を過ぎたら、なんだか医者の扱いに手抜きが見えてくるよ、ウン。
だって、死んだって文句の言えないトシだからね」


『大往生』永六輔


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